受賞者からのコメント
DMPK賞を受賞して岩手医科大学薬学部薬物代謝動態学講座
|
この度,我々の論文「CYP1A1 and CYP1A2 expression levels are differentially regulated in three-dimensional spheroids of liver cancer cells compared to two-dimensional monolayer cultures.」が2016年度DMPK賞に選ばれ,光栄に存じます.選考いただきました編集委員の先生方に心より感謝申し上げます.
「よりin vivoに近いがん細胞塊をin vitroで構築し,in vivoでの抗がん剤代謝をより正確にシミュレートする」を目標に始めた研究であり,その目標に到達するにはまだ多くの解決すべき問題があります.その中で,薬物代謝酵素の発現調節経路を解析するための実験系の構築ができた事は大きな一歩であり,今回の論文ではその実験系を用いて得られたデータを発表いたしました.
培養細胞がin vivoの細胞と異なる性質を持つことは古くから知られており,我々はその原因の一つとして,細胞集団が置かれた環境,特に細胞集団の形成環境が2次元状態か3次元状態で形成するのかによって細胞の持つ性質に違いが見られるのではないかと予想しました.この論文ではその予想の元,薬物代謝酵素であるCYP1Aファミリーの発現調節経路が2次元と3次元では異なることを証明しました.しかし,なぜ2次元と3次元で異なるのかについてのメカニズムは解明されておりません.我々はこれを解明することが,よりin vivoの細胞集団,細胞塊に近いin vitro実験系の構築に不可欠と考えており,新しい3次元細胞培養系の構築と平行して研究を進め,薬物代謝分野のさらなる活性化のために,スタッフ,学生一同力を尽くしたいと思っております.最後になりましたが,受賞にあたり,御指導,御協力いただいた方々に御礼申し上げます.