Newsletter Volume 31, Number 2, 2016

DMPK 31(2)に掲載された各論文の「著者から読者へのメッセージ」

[Regular Article]

pH依存性標的抗原結合性を有する新規抗体分子におけるPK/PD解析

Haraya, K., et al., pp. 123-132.

 本研究では我々が創製した新規抗体分子であるリサイクル抗体及びスイーピング抗体の標的可能な抗原プロファイル及びその効果を推定する事を目的にPK/PD解析を実施した.これらの抗体は標的抗原の消失クリアランスを加速させることで,標的抗原を十分量中和するために必要な投与量を低減し,また持続期間を延長することができると期待されている.抗体医薬品の標的可能な抗原は多岐に渡り,様々な血中/組織中濃度及び消失クリアランスを有する標的抗原が存在し,そのプロファイルに依存して必要な投与量,投与間隔は大きく異なる.これらの様々な抗原プロファイルを組み込んだ本解析結果から,リサイクル抗体及びスイーピング抗体が広範囲の抗原を標的とでき,必要投与量の低減及び持続期間の延長が達成できる可能性が示された.近い将来,これらの新規抗体分子が様々な疾患,標的抗原に適用されることが期待される.

 

[Regular Article]

板藍根成分中のindirubinは,pregnane X receptorを介してCYP3A4遺伝子発現誘導を引き起こす

Kumagai, T., et al., pp. 139-145.

 近年,健康食品(サプリメント,民間生薬を含む)を使用する人が増えており,医薬品と健康食品の併用時における薬物相互作用の発生が危惧されている.板藍根は中国で汎用されている健康食品であり,わが国でも容易に入手可能であるが,板藍根の薬物代謝酵素に及ぼす影響については明らかとなっていない.そこで板藍根のCYP3A4に及ぼす影響について検討した結果,板藍根がCYP3A4遺伝子発現を誘導し,板藍根中のindirubinが誘導に関与していることを明らかにした.また,indirubinによるCYP3A4遺伝子発現誘導には,CYP3A4誘導に必須の遺伝子領域であるeNR3A4がpregnane X receptorを介して転写活性化することを示した.今後,他の健康食品による薬物代謝酵素への影響についても明らかにしていきたいと考えている.