ニュースレター編集委員会より

はじめに

 2024年も残すところあとわずかとなりました.今年も数多くの出来事があり,50-50,初老ジャパン,新紙幣など,今年の出来事を反映するさまざまなことばが話題となりました.また,科学分野においてはノーベル賞で化学賞と物理学賞のいずれもAI分野の受賞となり,AIの社会への影響の大きさをますます感じました.一方で,自然災害など困難な出来事もありました.被災された方々には心よりお見舞い申し上げます.本当にいろいろなことがあった一年でしたが,来年はどのような一年になるでしょうか.皆様にとってよい一年になることを願っております.

 今年もニュースレターをご愛読いただきありがとうございました.これからもいろいろな情報発信をしてまいりますので,引き続きご支援,ご協力のほどよろしくお願い申し上げます.(T.I.)

【動態研究に取り組むNEW POWER】

  • ヒト薬物動態予測手法の開発を通じて創薬に貢献する(吉田光佐)

【学会 道しるべ】

  • 26th North American ISSX and 39th JSSX Meetingに参加して(山口有紀子)
  • 2024年度若手研究者海外発表支援を受けて(松井快人)
  • 26th North American ISSX and 39th JSSX Meetingに参加して(深田翔太)
  • 26th North American ISSX and 39th JSSX Meetingに参加して(大小原清貴)
  • 26th North American ISSX and 39th JSSX Meetingに参加して(長岡茉唯)
  • 26th North American ISSX and 39th JSSX Meetingに参加して(望月達貴)

【DMPK 58, 59に掲載された各論文の「著者から読者へのメッセージ」】

  • HeLa細胞における環状デプシペプチドDestruxin Eの細胞膜輸送・代謝の分子機構
  • 消化器系疾患患者におけるCYP3A活性の内因性マーカーおよび遺伝子変異を用いた血中ボノプラザン濃度の特性
  • シロリムス錠剤及び顆粒剤を投与した日本人データに基づく母集団薬物動態解析
  • 生理学的薬物速度論モデルを用いたボクロスポリンの食後の吸収低下の原因究明

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動態研究に取り組むNEW POWER

顔写真:吉田光佐

ヒト薬物動態予測手法の開発を通じて創薬に貢献する

田辺三菱製薬株式会社 薬物動態研究所
吉田光佐

 田辺三菱製薬株式会社,薬物動態研究所の吉田光佐と申します.この度は貴重な執筆の機会を頂き,ニュースレター編集委員の先生方に厚く御礼申し上げます.私は,京都薬科大学大学院修士課程を修了後,2009年に同社に入社し,企業の薬物動態研究に従事して16年目になります.これまでの企業研究において,ヒト薬物動態予測手法の開発を通じて社内プロジェクトの推進に貢献してきました.これまでの業務内容を振り返りながら,ご紹介させて頂きたいと思います.・・・(続きはNLホームページへ/会員専用

学会 道しるべ

顔写真:

26th North American ISSX and 39th JSSX Meetingに参加して

金沢大学医薬保健研究域薬学系 分子薬物治療学研究室
山口有紀子

 この度は,2024年度若手研究者海外発表支援事業に採択していただき,誠にありがとうございました.日本薬物動態学会会長の加藤将夫先生をはじめ,選考委員会の先生方に厚く御礼申し上げます.私は2024年9月15日~18日に行われた26th NAISSX/39th JSSXに参加し,「Optimization of linker sequence of aminopeptidase A-Fc fusion proteins in pharmacokinetics and antihypertensive effect」という題目でポスター発表を行いました.Aminopeptidase A(APA)の組換えタンパク質(rhAPA)は高分子であるため,胎盤移行性が低い降圧モダリティとして期待できます.rhAPAとFcドメインとの融合配列を最適化し,その体内動態と薬理活性を評価しました.・・・(続きはNLホームページへ

顔写真:松井快人

2024年度若手研究者海外発表支援を受けて

名古屋市立大学大学院薬学研究科 薬物動態制御学分野
松井快人

 2024年9月15-18日,米国ハワイ州ホノルルにて26th NAISSX/39th JSSX Meetingが開催されました.この度私は,2024年度若手研究者海外発表支援事業にご採用いただき,本学会に参加いたしました.選考から支援にあたり,日本薬物動態学会会長の加藤将夫先生,国際化推進員会委員長の中島美紀先生をはじめ,選考委員会の先生方に厚く御礼申し上げます.今回の学会参加は,私にとって初めての海外での発表となり,また初の海外訪問でもありました.様々な新たな経験を積むことができ,非常に貴重な機会となりました.この経験について,少しでも皆さまに共有できれば幸いです.・・・(続きはNLホームページへ

顔写真:深田翔太

26th North American ISSX and 39th JSSX Meetingに参加して

北里大学大学院薬学研究科 薬剤学教室
深田翔太

 この度は,2024年度若手研究者海外発表支援事業に採択していただき,誠にありがとうございました.日本薬物動態学会会長の加藤将夫先生をはじめ,選考委員会の先生方に厚く御礼申し上げます.私は2024年9月15日~18日に行われた26th NAISSX/39th JSSXに参加し,「ESTABLISHMENT OF A NOVEL IN VITRO ASSAY SYSTEM WITH CRYPT-DERIVED DIFFERENTIATED INTESTINAL CELLS TO EVALUATE DRUG-INDUCED GASTROINTESTINAL TOXICITY CAUSED BY THE DISRUPTION OF MUCUS LAYER」という題目でポスター発表を行いました.本学会を参加したことで,私が経験したことや感じたことを少しでも読者の皆様にお伝えできれば幸いです.・・・(続きはNLホームページへ

顔写真:大小原清貴

26th North American ISSX and 39th JSSX Meetingに参加して

富山大学 学術研究部 薬学・和漢系 薬剤学研究室
大小原清貴

 2024年9月15日~18日,米国ハワイ州ホノルルにて日本薬物動態学会第39回年会/26th North American ISSX Meeting(日米合同薬物動態学会)が開催されました.このたび私は,日本薬物動態学会の2024年度若手研究者海外発表支援事業にご採択いただき,その支援を受けて本学会に参加することが出来ました.選考に際して,日本薬物動態学会会長の加藤将夫先生,国際化推進委員会委員長の中島美紀先生をはじめ,選考委員会の先生方に厚く御礼申し上げます.

 本学術集会において私は,「Effect of lipopolysaccharide on P-glycoprotein at the inner blood-retinal barrier in vivo」の演題にてポスター発表を行いました.・・・(続きはNLホームページへ

顔写真:長岡茉唯

26th North American ISSX and 39th JSSX Meetingに参加して

金沢大学 医薬保健学総合研究科 創薬科学専攻
薬物代謝安全性学研究室
長岡茉唯

 この度は,2024年度若手研究者海外発表支援事業に採択していただき,誠にありがとうございました.選考にあたり,日本薬物動態学会会長の加藤将夫先生,国際化推進委員会委員長の中島美紀先生をはじめ,選考委員会の先生方に厚く御礼申し上げます.

 2024年9月15日から18日まで米国ハワイ州ホノルルにて開催された26th North American ISSX and 39th JSSX Meetingに参加し,「Mechanism by which AADAC regulates hepatic lipid level in vivo」の題目でポスター発表を行いました.・・・(続きはNLホームページへ

顔写真:望月達貴

26th North American ISSX and 39th JSSX Meetingに参加して

中外製薬株式会社 医科学薬理部
望月達貴

 私は2024年9月15-18日に米国ハワイ州ホノルルにて開催された26th North American ISSX and 39th JSSX Meetingに,日本薬物動態学会の若手研究者海外発表支援事業のご支援のもとで参加いたしました.この度は本事業にご採択いただき,日本薬物動態学会会長の加藤将夫先生をはじめ,選考委員会の先生方に厚く御礼申し上げます.

 私は本学会において”QUANTITATIVE PREDICTION OF P-GP/CYP3A SUBSTRATE DRUG ABSORPTION IN HUMANS USING A MONOLAYER MODEL DERIVED FROM INTESTINAL ORGANOIDS”というタイトルにてポスター発表を行いました.・・・(続きはNLホームページへ

DMPK 58, 59に掲載された各論文の「著者から読者へのメッセージ」

[Regular Article]

HeLa細胞における環状デプシペプチドDestruxin Eの細胞膜輸送・代謝の分子機構

Amifuji, M., et al.

 中分子環状ペプチドは,優れた標的特異性を示す創薬モダリティとして期待を集めています.環状ペプチドを医薬品として創製するためには,薬物動態研究を加速することが望まれます.特に,細胞内濃度を規定する細胞膜輸送及び細胞内における代謝の分子機構を明らかにすることが重要です.そこで本研究では,V-ATPase阻害活性によって多様な薬理活性をもつ環状デプシペプチドDestruxin Eに着目しました.本論文では,ヒト子宮頸がん細胞株(HeLa細胞)を用いて,Destruxin Eは可溶性エポキシドヒドロラーゼ(EPHX2)によって代謝され,その代謝阻害によってV-ATPase活性が増強することを見出しました.さらに,Destruxin Eの代謝物は,P-gpおよびBCRPを介して細胞外に排出されることを明らかにしました.今回得られた知見をもとに,より高活性の環状ペプチドの設計や環状ペプチドの体内動態予測法の構築につながることを期待したいと思います.

 

[Regular Article]

消化器系疾患患者におけるCYP3A活性の内因性マーカーおよび遺伝子変異を用いた血中ボノプラザン濃度の特性

Sakaguchi, K., et al.

 本研究では,消化器疾患患者におけるボノプラザンの薬物動態およびCYP3A活性に着目し,その特徴を明らかにした.ボノプラザンの血中濃度はCYP3A活性の内因性マーカーである4β-ヒドロキシコレステロール濃度と負の相関がみられたことから,ボノプラザン代謝にCYP3A活性が関係していることが観察された.CYP3A5遺伝子型は4β-ヒドロキシコレステロール濃度を変化させたが,ボノプラザン濃度には影響を与えず,ボノプラザンの代謝には主にCYP3A4が関与することが示された.組み換え代謝酵素タンパク質を用いたin vitro実験でも同様の結果を確認している.4β-ヒドロキシコレステロール濃度はCYP3A活性を説明できており,ボノプラザンの適切な投与量を決定するマーカーとして有用である可能性があるため,今後,適切な投与量を決定する個別化医療への貢献に期待する.

 

[Regular Article]

シロリムス錠剤及び顆粒剤を投与した日本人データに基づく母集団薬物動態解析

Miyazaki, T., et al.

 mTOR阻害剤であるシロリムス(SRL)は,その特性から様々な疾患の治療薬として期待されているが,日本人のSRLの薬物動態データは限られており,特に乳幼児を含む小児の顆粒剤投与時のデータは皆無であった.さらに,SRLの治療域は狭く,かつ小児患者においてはクリアランスが異なることが報告されている.そこで,我々は,乳児を含む小児から成人患者が対象である難治性脈管異常の開発を進めながら,SRLの適正な用量決定を目的として,日本人215例(1282ポイント)の血中濃度を使用して非線形混合効果モデルを用いた母集団薬物動態解析を実施した.その結果,SRLの血中濃度は,体重,年齢,CYP3A4誘導薬の有無,ヘモグロビン量等に影響を受けることが明らかとなった.このモデル化により,患者の状態に応じた血中濃度シミュレーションが可能となり,臨床現場における個々の患者の用量の調整に役立つことが期待される.

 

[Regular Article]

生理学的薬物速度論モデルを用いたボクロスポリンの食後の吸収低下の原因究明

Watanabe, A., et al.

 ループス腎炎治療薬であるボクロスポリンは親油性の環状ペプチドであり,臨床試験で食後の吸収低下が認められている.本研究では,生理学的薬物速度論(PBPK)モデルを用いて,ボクロスポリンの食後の吸収低下の原因を究明した.初めに,ボクロスポリンはP糖タンパク質及びCYP3A4の基質であることから,それらを発現するヒトiPS 細胞由来小腸上皮細胞の膜透過性を評価し,PBPKモデルにその膜透過を組み込み,空腹時の血中濃度推移を良好に予測できた.次に,ボクロスポリン及び食事成分との物理化学的な相互作用を評価し,PBPKモデルにその食事成分との吸着率を組み込み,低脂肪食及び高脂肪食時の血中濃度推移を良好に予測できた.これらの結果から,ボクロスポリンの食後の吸収低下の主な原因は,食事成分との物理化学的な相互作用であると考えられた.今後,本技術が食後の吸収低下を受けない環状ペプチド薬の創製に役立つことがあれば幸いである.

「DMPK著者から読者へのメッセージ」は本号で終了となります.次号からは,DMPK掲載論文の一覧を,abstractへのリンクとともにニュースレターで紹介していきます.これまでのご愛読,ありがとうございました.

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