ニュースレター編集委員会より

はじめに

 2024年も折り返し地点に差し掛かっています.今年は例年よりも梅雨入りが遅いようですね.ジメジメして雨の日も多い梅雨の季節は,外出するのも億劫になりがちですが,私は自宅からほど近い鎌倉の紫陽花を見に出かけるのを毎年楽しみにしています.数々の名所がありますが,特にお勧めなのは,北鎌倉の明月院で,「明月院ブルー」と呼ばれる鮮やかな青色の紫陽花で埋め尽くされた参道は圧巻の美しさです.そもそも鎌倉で紫陽花が有名になったのは,第二次世界大戦で荒れ果てた人々の心を癒すために,明月院の住職さんが紫陽花を植え始めたことがきっかけのようです.紫陽花は弱酸性の土壌で青色になるため,春先までに肥料などで酸性度を調整して色を保っているそうで,そんな温かい心遣いには頭が下がる限りです.

 そんな鎌倉ですが,オーバーツーリズムの影響なのか,近年は今までにないほどの多くの人であふれ返っており,以前のようにのんびり散歩とも言えない状況になっています.江ノ島電鉄鎌倉駅の改札前に観光客が数十メートルの列をなすこともしばしばで,そこからもう一つの紫陽花で有名な長谷寺の最寄り駅まで,あまりの混雑のため,電車で行くよりも歩いた方が早いという事態になっています.また,人気漫画「スラムダンク」にゆかりのある江ノ島電鉄の踏切に外国人観光客が殺到し,観光客が車道に広がって写真を撮るために車両の通行を妨げるなど,大きな社会問題となっています.こうしたオーバーツーリズムはコロナ禍の終息を機に世界的に広がっており,9月中旬に日本薬物動態学会第39回年会(日米合同薬物動態学会)が開催されるハワイも例外ではありません.ワイキキビーチ,ダイヤモンドヘッド,アラモアナショッピングセンター,カメハメハ大王像など,数々の魅力的な観光スポットがあり,とても開放的な気分になると思いますが,地元住民の方がいることも頭の片隅に置いて,日本人として,そして日本を代表する薬物動態研究者としての節度を保ちながらハワイでのひと時を楽しんできてください.(Y.M.)

【動態研究に取り組むNEW POWER】

  • 低体温療法時の薬物投与最適化に向けて(宮元敬天)

【今さら聞けない抗体薬物複合体(Antibody Drug Conjugate: ADC)の体内動態研究】

  • 第5回:前臨床ステージにおけるADCの分析及びADME評価とモデリング&シミュレーション(岡本裕美,永井陽子)

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動態研究に取り組むNEW POWER

顔写真:宮元敬天

低体温療法時の薬物投与最適化に向けて

長崎大学 生命医科学域(薬学系) 薬剤学分野
宮元敬天

 長崎大学生命医科学域(薬学系)薬剤学分野の宮元敬天と申します.この度は,日本薬物動態学会ニュースレター「動態研究に取り組むNEW POWER」へ寄稿する機会を頂戴し,編集委員の皆様をはじめ,関係者の方々に感謝申し上げます.私は2004年に長崎大学薬学部に入学し,学部4年生からは中村純三先生(当時)が主宰される薬剤学研究室に配属となり,薬物動態研究がスタートしました.2008年には長崎大学大学院医歯薬学総合研究科博士前期課程に進学し,2013年3月に学位を取得しました.

 本稿では私のこれまでの研究の振り返りと実務家教員としての取り組みを紹介させていただこうと思います.・・・(続きはNLホームページへ/会員専用

今さら聞けない抗体薬物複合体(Antibody Drug Conjugate: ADC)の体内動態研究

第5回:前臨床ステージにおけるADCの分析及びADME評価とモデリング&シミュレーション

第一三共株式会社 薬物動態研究所
岡本裕美,永井陽子

 こんにちは!「抗体薬物複合体(Antibody Drug Conjugate: ADC)の薬物動態研究入門」について,最終回となる今回は,基本情報をおさらいしながらADCの前臨床研究における各種薬物動態試験データの取得タイミング及び,ADCのモデリング&シミュレーションについてお話したいと思います.

 第1回でもお話したように,「低分子」と「抗体」のいいとこ取りをしたModalityが「ADC」です.「低分子」の強みである強力な抗腫瘍活性を維持しつつ,「抗体」の高いターゲット組織特異性を利用して正常組織への非特異的な曝露に伴う強い副作用を低減させることで,therapeutic windowを広げることが可能となります.ADCは「抗体」,「結合部位」,「リンカー」および「ペイロード」の4構成要素から成っており,前臨床研究においては,「リンカー」や「結合部位」に基づくADCの特徴を理解しながら,「抗体」,「ペイロード」そして「ADC」としてのADME研究を同時に進めていくことが求められています.・・・(続きはNLホームページへ/会員専用


※DMPK 56に掲載された各論文の「著者から読者へのメッセージ」は次号に掲載予定です。

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