学会 道しるべ
26th North American ISSX and 39th JSSX Meetingに参加して北里大学大学院薬学研究科 薬剤学教室
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この度は,2024年度若手研究者海外発表支援事業に採択していただき,誠にありがとうございました.日本薬物動態学会会長の加藤将夫先生をはじめ,選考委員会の先生方に厚く御礼申し上げます.私は2024年9月15日~18日に行われた26th NAISSX/39th JSSXに参加し,「ESTABLISHMENT OF A NOVEL IN VITRO ASSAY SYSTEM WITH CRYPT-DERIVED DIFFERENTIATED INTESTINAL CELLS TO EVALUATE DRUG-INDUCED GASTROINTESTINAL TOXICITY CAUSED BY THE DISRUPTION OF MUCUS LAYER」という題目でポスター発表を行いました.本学会を参加したことで,私が経験したことや感じたことを少しでも読者の皆様にお伝えできれば幸いです.
(少し余談になりますが…)さかのぼること,本学会開催の約1年前.私は2023年の夏に26th NAISSX/39th JSSXの開催を知りました.国際学会という響きに憧れを感じたのはもちろん,何よりも魅力的に感じさせたのはその開催地です.研究者として褒められる動機でないことは重々承知していますが,参加に向けてより一層研究に熱が入ったのを今でも覚えています.年月が経つものは早いもので,念願のその開催地へ向けて日本を出発しました.慣れない飛行機の移動と時差で眠かったですが,せっかくなので皆で少し観光をしようということになりました.そうしてビーチに訪れた私の目に飛び込んできたのは,エメラルドグリーンの海,青い空,白い雲.どこを切り取っても絵葉書になりそうなその光景は私の眠気を吹き飛ばすのに充分でした.こうしてワクワクしながら私の初めての国際学会が始まりました.
さて,実際にポスターセッションでは,初めての国際学会ということもあり通常より緊張していましたが,発表時間を迎えるや否や,前日催されたNew Investigators Meet Upで知り合った同年代の大学院生が見に来てくださり,議論を通して緊張がほぐれたことを覚えています.私の発表にどれだけの方が興味を示してくれるかどうか不安ではありましたが,始まってからひと段落ついてみると終了時刻を30分過ぎており,あっという間に感じてしまうほど有意義な時間を過ごせました.薬物による毒性発現やmucinといった自身の研究と関連する領域の研究者の方々と研究内容を共有でき,さらに新たな視点も得ることができて大変有益でした.また,発表時間外にも私のポスターに興味を持っている方を見かけて少しうれしいと思う反面,話しかけに行く勇気を持てず,それが顔に出ていたのかわかりませんが向こうから声を掛けられ,少しばかりの議論を交わしました.次からは国内外問わず,学会において積極的に自分をアピールしていければよいなと感じる出来事でもありました.
また,私は薬物誘導性の消化管毒性評価に着目して研究を行っていますが,関連する研究で興味深かったのは,「DRUG-INDUCED GASTROINTESTINAL TOXICITY DUE TO DISRUPTION OF THE INTERINFLUENCE BETWEEN SEROTONIN AND GUT MICROBIOTA」という金沢大学のAsaji先生の発表です.メトホルミンによる下痢の副作用が,5-HTの輸送担体の阻害と腸内細菌叢の変化を通じて起こるという新たなメカニズムが示されており,興味深く拝見させていただきました.自身も消化管毒性の研究を行っているので,薬物誘導性消化管毒性と腸内細菌叢との関連の重要性を再認識でき,とても勉強になる発表でした.
今回,初めての国際学会に参加しましたが,海外の先生方の発表を聞き取るのに苦労したり,英語でのコミュニケーションの難しさを痛感したりと,自分の中で満足のいくものでは決してありませんでした.しかしながら,本学会を契機にさらに国際的な取り組みに関わっていこうとするモチベーションへと繋がり,また,様々な分野の最先端の知見に触れたことは,自身の研究に還元できる貴重な経験となりました.日本薬物動態学会員の若手研究者の皆さまにも,ぜひ本事業を通じて国際学会に参加し発表することで,更なる研究の飛躍につなげていただきたいと思います.
最後となりましたが,本事業により国際学会に参加させていただいたお陰で貴重な経験を積ませていただいたことを心より感謝申し上げます.この経験を活かし,より一層研究に邁進していく次第であります.