Newsletter Volume 39, Number 6, 2024

学会 道しるべ

顔写真:長岡茉唯

26th North American ISSX and 39th JSSX Meetingに参加して

金沢大学 医薬保健学総合研究科 創薬科学専攻
薬物代謝安全性学研究室

長岡茉唯

 この度は,2024年度若手研究者海外発表支援事業に採択していただき,誠にありがとうございました.選考にあたり,日本薬物動態学会会長の加藤将夫先生,国際化推進委員会委員長の中島美紀先生をはじめ,選考委員会の先生方に厚く御礼申し上げます.

 2024年9月15日から18日まで米国ハワイ州ホノルルにて開催された26th North American ISSX and 39th JSSX Meetingに参加し,「Mechanism by which AADAC regulates hepatic lipid level in vivo」の題目でポスター発表を行いました.これまで,当研究室にて加水分解酵素アリルアセタミドデアセチラーゼ(AADAC)が細胞内の脂質レベルを減少させることを明らかにしてきました.生体内においてトリアシルグリセロールやコレステロールエステルなどの脂質は長い炭素鎖を有する脂肪酸から構成されているため,AADACがアセチル基を有する化合物を好む基質選択性を示すことから脂質を加水分解する可能性が低く,AADACが脂質レベルを低下させるメカニズムは明らかにされていませんでした.そこで,Aadacを欠損させたマウスを用いた検討により,Aadacがフェロキシダーゼ活性を有するセルロプラスミンとの相互作用を介して小胞体ストレスから細胞を保護することで,肝臓の脂質蓄積を抑制することを明らかにし,この研究成果について発表しました.有益なご助言をいただき,議論を通じてより考えを深めることができました.また,活発に議論できたことは自信にもつながりました.

 薬物モダリティの多様化やAIを用いたヒトにおける薬物動態や毒性の予測精度の向上に関する講演など,どれも大変興味深いものでしたが,その中で特に印象に残った講演について紹介させていただきます.John O. Miners先生(Flinders University)のご講演では,in vitroでの研究の発展に伴い,in vitroin vivo外挿や薬物間相互作用がよく研究されていますが,研究者によりその評価方法が異なることが多く,結果の解釈にずれが生じるため,in vitroで評価する上で注意すべき点について言及されていました.また,山崎浩史先生(昭和薬科大学)のご講演では,種差による毒性発現の違いや酵素の寄与率の同定への影響について述べられていました.正しく評価するには,実験方法および解析方法が適切であるかを常に意識しながら研究を進めていく必要があることを再認識しました.

 今回が初めての国際学会への参加となりましたが,アカデミアや企業など様々な視点からの発表を聞いて薬物動態の動向に対する視野が広がったのと同時に,より多くの方に自分の研究成果を知っていただく機会にもなり,大変有益な時間を過ごすことができました.私と同世代の方が発表したり議論したりする姿はとても刺激になりました.また,英語能力の未熟さから理解できなかったり,海外の研究者との深い議論ができなかったりしたため,英語能力の向上に努める必要があると痛感しました.国際学会への参加を通じて,最先端の情報を得るだけでなく,ネットワークが広がったり,刺激を受けることで今後の研究のモチベーションにもつながったりしたと感じたため,ぜひ薬物動態学会会員の皆様も国際学会に参加していただきたく存じます.今回,参加支援をいただいたおかげで貴重な経験をすることができました.この経験を糧に今後の研究に活かしていきたいと思います.末筆ながら,本事業の益々のご発展をお祈り申し上げます.

ポスター発表および当研究室から一緒に参加した方々との写真

 

「DMPK著者から読者へのメッセージ」は本号で終了となります.次号からは,DMPK掲載論文の一覧を,abstractへのリンクとともにニュースレターで紹介していきます.これまでのご愛読,ありがとうございました.