Newsletter Volume 39, Number 6, 2024

学会 道しるべ

顔写真:大小原清貴

26th North American ISSX and 39th JSSX Meetingに参加して

富山大学 学術研究部 薬学・和漢系 薬剤学研究室
大小原清貴

 2024年9月15日~18日,米国ハワイ州ホノルルにて日本薬物動態学会第39回年会/26th North American ISSX Meeting(日米合同薬物動態学会)が開催されました.このたび私は,日本薬物動態学会の2024年度若手研究者海外発表支援事業にご採択いただき,その支援を受けて本学会に参加することが出来ました.選考に際して,日本薬物動態学会会長の加藤将夫先生,国際化推進委員会委員長の中島美紀先生をはじめ,選考委員会の先生方に厚く御礼申し上げます.

 本学術集会において私は,「Effect of lipopolysaccharide on P-glycoprotein at the inner blood-retinal barrier in vivo」の演題にてポスター発表を行いました.重篤な網膜疾患である糖尿病網膜症の発症・進行について,内因性化合物も認識する薬物トランスポーターがどのように関与するかを明らかにすることを目指し,私は日々研究に取り組んでいます.本学会では,網膜関門にて網膜内物質クリアランスを担うP-糖タンパク質が,本網膜症時に示される細菌性炎症時では機能低下することについて発表しました.この発表を通して様々な研究者の方々と議論を重ねる機会を頂き,より多角的に自身の研究を見つめ直すことができました.また,P-糖タンパク質の網膜疾患への応用について国内外の先生方と相談することもでき,今後研究を進めていく上で大変有益な時間となりました.

 私にとって,この学術集会が初めての海外発表の機会であり,海外の研究者と討論できる大変貴重なものと感じていました.そのため,会期中は積極的に周囲の方々と英語によるコミュニケーションを図るように心掛けました.色々な方と対話することが出来ましたが,自分の言いたいことが十分に伝わっているとは感じられなかった場面も多々あり,英語を扱う能力の未熟さを感じました.世界に発信されている最新の知見を吸収し,自身の研究をより多くの方々に伝えていくためにも,実用的な英語の運用能力を高めていくことが今後の自身における課題と痛感しました.

 本学会では,生理学的薬物速度論(PBPK)モデルを用いた薬物間相互作用の解析に関する研究発表が数多くなされており,医薬品開発におけるトランスポーターの重要性について,異なった視点から考えを深める貴重な時間となりました.また,North Carolina UniversityのKim Brouwer先生による発表では,私が着目している分子でもあるP-糖タンパク質を含むABCトランスポーターの輸送調節メカニズムに関する最新の知見が発表され,自身の研究により還元性のある情報を得ることもできました.

 最後になりますが,改めまして,2024年度若手研究者海外発表支援事業にご採択頂きましたこと,心より感謝申し上げます.26th NAISSX/39th JSSX Meetingへの参加を通じて,言葉では表しきれない程の大変実りある時間を過ごすことが出来ました.今後は,本学会での経験を活かして,薬物動態学分野の発展に貢献できるよう努めて参りたいと存じます.

学会会場・ポスター発表の様子

 

「DMPK著者から読者へのメッセージ」は本号で終了となります.次号からは,DMPK掲載論文の一覧を,abstractへのリンクとともにニュースレターで紹介していきます.これまでのご愛読,ありがとうございました.