[Regular Article]
Shibazaki, C., et al.
本研究では,薬物の代謝活性化反応の中でもリスク評価の報告が少ないアシルCoA抱合代謝に着目し,反応性が高いアシルCoA代謝物を効率的に捕捉するトラッピング剤の創製を目指した.肝ミクロソーム系における検討の結果,チオール基とアミノ基を有するトラッピング剤(Cys-Dan)が,分子内転位を経てアミド結合を有する安定な付加体を形成することが明らかになった.さらに,上述のCys-Danに加え,筆者らがこれまで開発してきた複数のトラッピング剤が,肝ミクロソーム系ではなくヒト肝細胞系においても機能するかを検討した.その結果,どのトラッピング剤も細胞系で効率的かつ定量的に反応性代謝物を捕捉することができた.肝ミクロソームとは異なり肝細胞には代謝酵素や解毒系が十分存在することから,より生体に近い状態で反応性代謝物のリスク評価が可能であることが示された.以上より,本トラッピング剤およびその試験系は安全な医薬品を創製する上で極めて有用であり,今後創薬支援ツールとして創薬研究に大いに貢献するものと考えている.
[Regular Article]
Usui, S., et al.
食品の作用は,食品中の高分子成分の代謝産物あるいは低分子成分によるものであると考えられている.一方,食品には細胞外小胞(Extracellular Vesicle: EV)が含まれ,その含有成分の作用が報告され始めた.核酸などの高分子はEV中では安定性と膜透過性が改善され,食品由来高分子が直接消化管に作用する可能性がある.ASBTは,小腸下部特異的に発現する胆汁酸トランスポーターで,胆汁酸の腸肝循環に必須であり,治療標的ともなっている.私たちは既にリンゴジュースがASBT発現を低下させることでの便秘改善作用を示すことを報告してきた(PMID: 37129213).本研究では,リンゴ由来細胞外小胞(APEV)中miRNAが転写因子RARαの発現抑制を介してASBTの活性低下作用を示すことができた.APEV中にpolyol類は含まれていないため,IBD患者さんにも負担なく便秘の改善ができる.本成果は,食品による消化管機能調節の新しいメカニズムを示しており,食品由来のmiRNAのような高分子化合物がEVを介するという新しい食品機能を提唱する.
[Regular Article]
Yoshihara, K., et al.
エサキセレノンは非ステロイド型の新規選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRブロッカー)であり,従来のステロイド構造のMR拮抗薬に比べ,高いMR結合親和性及び選択性を有する.本研究では,エサキセレノンの臨床試験全15試験に組み入れられた多様な日本人患者・健康被験者1,623名から得た血漿中エサキセレノン濃度8,263点を含む比較的大きなデータセットを使用して,エサキセレノンの母集団薬物動態を評価した.共変量解析の結果,エサキセレノンの曝露量に最も影響を及ぼす共変量はイトラコナゾール併用(+64%)及びリファンピシン併用(−68%),次いで体重(−26%~+36%)であり,推定糸球体濾過量を含むその他のベースライン共変量の影響は限定的であった.MRブロッカーは糖尿病性腎臓病に対する有望な治療オプションとして期待されており,エサキセレノンが腎機能低下の影響を受けにくい薬物動態特性を有することが明らかになったことは重要である.
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