[Regular Article]
Han, H., et al.
有機アニオン輸送ポリペプチド (OATP) 1A2はfexofenadine (FEX) をはじめ臨床上重要な薬物の消化管吸収や分布を担っている.また,OATP1A2にはアミノ酸置換を伴う変異型分子種が同定されており,その基質輸送活性の変動が示唆されているが,FEXの輸送活性に対するアミノ酸置換の影響は明らかになっていなかった.一方,OATP1A2の輸送活性はpH依存的に変動し,消化管内のような低pH環境では輸送能が上昇することが報告されているが,FEXの輸送活性に対するpHの影響は明らかになっていなかった.そこでin vitroにおいて,FEX輸送に対する遺伝的変異の影響を調べたところ,Thr668Ser変異体において輸送活性は大きく上昇し,さらに低pH環境により増大した.一方で,pHの影響は同典型的基質のestrone 3-sulfateよりも弱く,基質によってその影響の程度は異なった.今後は,OATP1A2遺伝的変異の臨床的意義について明らかにしていきたい.
[Regular Article]
Kuwada, H., et al.
致命的ながんの1種である膀胱がんを克服するには,早期の診断と治療介入が重要です.著者らは,早期の診断を目的としてシトクロムP450阻害アッセイを開発しました.P450阻害アッセイ法とは,炎症および内因性または外因性物質への曝露によって引き起こされる,血清中のP450関連物質の質と量の変化を検出するものです.先の研究から,膀胱がんは,患者のP450発現レベルを変化させることが知られています.そこで,P450阻害アッセイが膀胱がん患者の血清と健康な個人の血清を区別できるかどうかを評価しました.膀胱がんマウスと対照マウスから回収した血清を用いて本アッセイを行ったところ,CYP2A13,CYP2C18,CYP2E1の阻害率に有意差が認められました.さらに,ヒト臨床サンプルを使用した本アッセイの結果は,P450阻害アッセイが0.867~0.950の受信者動作特性 (ROC) 曲線下の領域で膀胱がんを検出できることを明らかにしました.これらの実験結果から,P450阻害アッセイは,将来的に膀胱がんのリキッドバイオプシーの開発に役立つことが示されました.
[Regular Article]
Cho, N., et al.
Benzbromarone (BBR) による肝障害発現には反応性代謝物生成の関与が考えられている.本研究では,ヒトにおいて生成するBBRの反応性代謝物を明らかにするため,ヒト肝キメラマウスを用い検討を行った.BBR経口投与後のヒト肝キメラマウスにおけるBBRと主要代謝物 (1’位水酸化BBR及び6位水酸化BBR) の血中動態が,ヒト臨床における文献報告と類似したことから,当該マウスがヒトにおけるBBRの血中動態を再現し得ることが示唆された.また,血漿,肝臓及び尿中において,1’,6位水酸化を介して生成する反応性代謝物と,ベンゾフラン環のエポキシ化を介して生成する反応性代謝物が検出された.これら反応性代謝物は,ヒト肝を移植していないマウスと比較しヒト肝キメラマウスにおいて生成量が高かったことから,マウスへ移植したヒト肝酵素により生成した代謝物と考えられた.以上より,ヒトにおいてもこれら反応性代謝物が生成し肝障害発現に寄与する可能性が示唆された.
[Note]
Chantarasrivong, C., et al.
炎症組織である腫瘍の血管にはE-セレクチンが発現しています.私達は,E-セレクチンリガンドのシアリルルイスX(sLeX)に着目し,その構造単純化体で修飾したリポソーム製剤による腫瘍血管ターゲティングを試みてきました.しかし,マウス固形腫瘍モデルでの体内分布や腫瘍増殖実験では,通常のリポソームとの明確な差がみられません.それは,固形腫瘍モデルではEPR効果の影響が強く出るからです.そこで,マイクロ流体デバイスを設計して,灌流血管網をもった腫瘍スフェロイドをチップ上に構築し,sLeX mimic修飾リポソームの動態を評価することを計画しました.HUVECを3D培養するとチューブを形成します.これを利用して,腫瘍スフェロイドと動・静脈マイクロチャネルとをHUVEC血管網で連結させました.蛍光標識したリポソームを動脈流路に添加して流すと,sLeX mimic修飾リポソームでは血管に集積する様子をリアルタイムで観察できました.
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