学会 道しるべ
22nd North American ISSX Meetingに参加して愛知学院大学 薬学部 薬剤学講座
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2018年7月15-19日,Palais des congrès de Montréal(Montréal, Canada)にて,22nd North American ISSX Meetingが開催されました.この度私は,平成30年度日本薬物動態学会若手研究者海外支援事業にご採択いただきまして,本学会に参加して参りました.この場をお借りして,日本薬物動態学会会長の山崎浩史先生をはじめ,選考委員会の先生方に厚くお礼申し上げます.国際化推進委員会より学術的課題などのご指摘をいただき,発表・聴講を通じて多々刺激を受け,大変有意義な時間を過ごすことができました.
今回私は,薬物トランスポータOATP2B1/SLCO2B1を介した薬物相互作用の解析を目指してOATP2B1の基質認識について検討し,“Investigation of human organic anion transporting polypeptide 2B1 using fluorescent anions”というタイトルで筆頭発表者として,また,“Substrate-dependent interactions between natural flavonoids and drug transporter OATP2B1”というタイトルで共著発表いたしました.これら一連の研究では,ハロゲン化またはカルボキシル化されたフルオレセイン誘導体がOATP2B1の蛍光基質として有用であること,またこれらの輸送特性が異なることを見出しました.さらに,誘導体二種の輸送に及ぼすフラボノイドの影響を検討し,OATP2B1に対して基質特異的な相互作用が生じることを見出しました.これら発表に対して,OATP1B1などの他のOATP isoformとの輸送特性比較や,非蛍光性の基質との相互作用プロファイルとの比較に関する質問がワシントン大のJash Unadkat先生などから寄せられました.薬物動態領域の研究を深める上で,単一の分子 – 基質を対象とした検討だけではなく,複数の分子 – 基質の組み合わせを用いた輸送特性・相互作用検討など,ある程度の「網羅性」を意識して研究計画を練る必要があると痛感いたしました.ありがたいことに,その際比較すべき化合物についてUnadkat先生からsuggestionを頂くことができました.
New Investigator Award Lectureでは,ワシントン大のBhagwat Prasad先生がマルチオミクスを用いたNon-P450薬物代謝の個人差について報告されていました.UGT2B17の発現量や,UGT2B17基質薬物であるMK-7246の動態変動から,性別や年齢はUGT2B17発現量,ひいてはUGT2B17基質薬物の動態個人差の一因となりうることを示し,薬物相互作用および小児薬物治療ガイドラインにUGT2B17基質となる化合物を追加することを提言されていました.この発表に限らず,網羅的解析と数理モデリングを活用した研究が多数発表されており,質疑応答でその精度を議論している様を目にして,予測精度を上げるために自らが今後研究すべきことを再考するよい契機となりました.
また,妊婦への抗てんかん薬処方に関するオタワ大のTadeu Fantaneanu先生の発表では,患者のてんかん発作の動画にはじまり,子供を希望する婦人に対し家族計画を踏まえて処方を検討していく様を垣間見ることができ,普段実臨床に触れることのない者として,薬物治療を以て患者の人生に踏み込んでいく様が新鮮に映りました.自身の研究も,間接的ではあれ最終的に人々の健康に資するものとしたいとの思いを強くしました.
発表以外のことに目を向けてみますと,本学会ではポスター会場において企業ブースを回って各担当者のサインを集める,ミキサー会場において「ありがとうを4カ国語で言える」,「1年以内に学位取得予定である」などの短文が書かれたビンゴシートを用いて該当する研究者のイニシャルを集めるなど,ミニゲーム形式で活発な交流を促しており,外国語でコミュニケーションを取ることに不慣れな者に対しても,言語の壁に対する心理的障壁を崩す上でよい工夫がされておりました.
学生・院生の皆さん,国際学会は日頃読む論文の著者と交流し,研究の間口を広げる絶好の機会です.是非,日本薬物動態学会・若手研究者海外支援に応募して国際学会に参加してみてください.最後になりましたが,参加支援を頂いたお陰で貴重な体験をさせていただき誠にありがとうございました.今後の研究に活かし,薬物動態領域研究のさらなる発展に貢献したいと存じます.末筆ながら,本事業の益々のご発展をお祈り申し上げます.
学会会場・発表風景