Newsletter Volume 33, Number 1, 2018

展望

日本薬物動態学会第15期会長挨拶

昭和薬科大学 薬物動態学研究室
山崎浩史

 大森 栄会長の後任として,山崎浩史が2017年11月30日より15期日本薬物動態学会会長に就任致しました.1985年に設立された本学会は,2年前に一般社団法人化され,初めての役員交代期を迎えました.法人定款に従い,代議員会にて新役員一同が承認されたのが第32回東京年会2日目午後でありました.ここに新任会長としてのご挨拶と,若干の個人的なメッセージを申し上げます.

 歴代の会長,役員および会員の皆様の活躍のもと,日本薬物動態学会は,薬物動態領域を常にリードしてきました.本学会が発行するDrug Metabolism and Pharmacokinetics誌は,今やエルゼビア社のオンラインジャーナルと発展し,国際薬物動態学会(ISSX)の年会の抄録をも発行する国内外の2つの学会の指定機関誌として国際的に評価を受けるようになりました.新理事会および新各種委員会は,薬物動態の境界領域の新技術の導入はもちろんのこと,臨床現場の諸問題に立脚し,多様な研究機関で実施され,最終的に成果を臨床にフィードバックするリバース・トランスレーショナル・リサーチ手法による既存薬の積極的な活用や育薬領域にも発展的に寄与したいと存じます.日本学術会議医療系薬学部会と日本薬学会は,共同企画「社会に貢献する医療系薬学研究の推進」シンポジウムを本年3月日本薬学会金沢年会時に開催いたします.ここでは,日本薬物動態学会を代表し,日本薬学会,日本薬剤学会,日本医療薬学会,日本薬理学会,日本製薬協代表と一緒に,今後の展望や施策提案を議論する予定であります.さらに,日本薬物動態学会として,企業研究者とアカデミア研究者が連携して,最新の創薬研究の動向について情報を提供することを目的とし,研究動向調査のため,斎藤副会長をリーダーとするワーキンググループを新たに立ち上げました.本グループは,英文ホームページ上ではワーキングではなく,各種委員会に格上げした扱いとしてあります.一方,例年5月に開催されてきたワークショップを発展的に解消し,国際薬物動態学会のようなショートコースを秋の年会時に行う決断にも,決議当時副会長であった山崎が深く関わっておりました.背景として,5月は関連する学会や学術集会が毎週のようにあること,日本動態学会内においてもディレクターズ・イニシアティブ・セッション(DIS)活動による重複した企画が散見されること,運営に当たる世話人の種々の負担など,近年の諸要素を総合的に考え,32年の永きに亘るワークショップを成功裏のうちに発展的解消へと導きました.このように,本学会の内外に向けた情報発信を今後とも新理事会および新各種委員会として皆様のご協力のもと,目指してゆく所存であります.

 若い研究者や学生の皆さんに向けて,経験を重ねた(要は古い)個人的な話を少しします.本年会の前身となる第1回薬物代謝と薬効・毒性シンポジウムは,1969年11月に日本薬学会主催にて,創薬貢献・北川賞のお名前を冠している千葉大北川先生のもとで開催されました.私個人は,岐阜での第16回大会の会場手伝いを経て,1985年10月,第17回薬物代謝と薬効・毒性シンポジウム(仙台)に大学院生として,はじめてポスター発表にて参加しました.当時の講演要旨集は,B5版で手書きのコピーが半数程度を占め,前会長大森 栄先生他,歴代会長経験者が演者に並び,大阪府公衛研時代の恩師となる島田 力先生がヒトP450 2C酵素の単離精製と機能解析を要旨に書かれておりました.日本薬物動態学会は翌年第1回年会を持ち,その後,日本薬物動態学会と日本薬学会の共催の時期がありましたが,日本薬物動態学会が前身の薬効毒性シンポジウムを単独年会として主催するようになりました.これを契機に,私自身はやや遅れて1995年に日本薬物動態学会に入会しました.かつてP450発見の地である大阪にてヒト肝P450研究を担当できたことが,時を経て2017年に学会会長を拝命するに繋がるとは全く想像できておりませんでした.当年会に不思議な縁と深い感謝を感じつつ,会員の皆様にとっても,振り返れば日本薬物動態学会との関わりの中で,日常の積み重ねは,何一つ無駄なことはないと,後日しみじみと語る日が必ず来ることと思います.

 さて次回2018年日本薬物動態学会金沢年会は,1968年から開催されてきたMicrosomes and Drug Oxidations (MDO) 国際会議と共催となります.50年の歴史を持つMDOの日本開催は,1981年,2002年についで3度目であります.さらに2020年日本薬物動態学会ハワイ年会は,ISSX北米大会と共催となります.グルーバルな活動が継続していく時流に乗って,法人化後の組織運営においても諸事活動を定着させたいと願っております.結びとして,日本薬物動態学会の幅広い領域でのさらなる発展と国際化のため,これまで以上に会員の皆様の本学会への協力をお願いする次第であります.