展望
レギュレーションDISの役割と活動予定国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部
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DIS世話人
代表世話人 | 斎藤嘉朗 | 国立医薬品食品衛生研究所,医薬安全科学部 |
世話人 | 永井尚美 | 武蔵野大学,薬学部 |
石井明子 | 国立医薬品食品衛生研究所,生物薬品部 | |
渡邉伸明 | 第一三共株式会社,薬物動態研究所 | |
岩坪隆史 | アステラス製薬株式会社,ドラッグリパーパシング部 | |
二宮真一 | 積水メディカル株式会社,創薬支援事業部 | |
設楽悦久 | サノフィ株式会社,薬物動態部 |
医薬品開発における薬物動態評価において,レギュレーションの動向を把握し,必要に応じて学会として行政の動きに協力すること,意見を述べることは,専門家集団として重要な役割である.薬物動態はかつて医薬品の開発中止における主要な原因の一つであったが,近年,本原因による開発中止は大幅に減少している.これは本学会の先達の精力的な研究による科学的知見の蓄積と,企業及び規制当局がそれらの科学的知見をそれぞれ医薬品評価及び行政規制に組み込んだこと,すなわち産官学の連携が上手く機能した結果によるものと言える.しかし科学は常に進歩しており,例えば薬物相互作用におけるトランスポーター評価の重要性に関する知見の集積,モデリング&シミュレーションの実用化,等に基づく評価項目の追加など,薬物動態評価の行政ガイドラインは,その時代に活用されている科学技術が反映されるよう一定期間ごとに改訂が必要である.また,低分子医薬品に加え,バイオ医薬品,核酸医薬品,再生医療製品(細胞加工製品),遺伝子治療用製品などのNew Modality医薬品開発の活性化に対応するための新たな薬物動態評価戦略及び評価方法の必要性が謳われると共に,マスイメージングによる代謝物等の分布評価,バイオマーカーのバイオアナリシスなど,新しい技術を薬物動態評価に活かすための対応も必要とされている.これら新しい評価戦略・評価方法・評価技術に関する科学的知見が集積されれば,今後,行政ガイドラインの作成が検討されると思われる.レギュレーションDISの役割は,年会等における会員の先生方のご発表や議論の中から,これら行政に反映させるべき新たな知見や重要なポイントを抽出してまとめると共に,行政の動きをいち早く会員に伝えることにあると考える.
本DISとして,2017年の第32回年会では,薬物動態周辺領域を含めて行政の動きをいち早く会員に伝えることを目的に,「薬物動態研究者が知っておきたい規制の動き」と題して,以下の7演題を予定している.
- 母集団薬物動態・薬力学解析:落合義徳先生(PMDA)
- ICH S5(生殖発生毒性試験):真木一茂先生(PMDA)
- ICH S9(抗悪性腫瘍薬の非臨床評価):中江大先生(東京農大)
- ICH S11(小児用医薬品開発の非臨床試験):高橋祐次先生(国立衛研)
- ICH M9(BCS バイオウェーバー):栗林亮佑先生(PMDA)
- ICH M10(生体試料中薬物濃度分析法バリデーション):石井明子先生(国立衛研)
- 革新的医薬品等実用化促進事業(核酸医薬品,ゲノム薬理,臨床試験デザイン等):斎藤嘉朗(国立衛研)
これらは企業における薬物動態評価のみならず,安全性評価を含めた非臨床・臨床評価に広く関わる規制であり,企業における他部門との連携においても重要な内容を含んでいる.現在,医薬品開発に従事している研究者のみでなく,将来,企業において医薬品開発に携わりたいと考えている学生や規制当局において審査等業務に携わりたいと考えている学生の,積極的な参加を期待する.