Newsletter Volume 32, Number 4, 2017

展望

NEW MODALITY DIS(次世代薬,治療DIS)

横浜薬科大学臨床薬学科
桒原 隆

DIS委員
委員長 桒原 隆 横浜薬科大学,臨床薬学科
委員 石井明子 国立医薬品食品衛生研究所,生物薬品部
西川元也 東京理科大学,薬学部
細木 淳 協和発酵キリン株式会社,トランスレーショナルリサーチユニット
追立真孝 第一三共株式会社,薬物動態研究所
尾関和久 中外製薬株式会社,研究本部

 

 本DISは,2017年から新設されたDISであり,名前の通りnew modalityに関する薬物動態研究に関して,幅広く,情報を収集し,あるいは発信していくことを活動目標としている.インターフェロン,t-PA(tissue plasminogen activator)などのタンパク質が,遺伝子組換え技術の進展により,医薬品として生産され,最初の上市から既に30年が経過している.タンパク質医薬品は,比較的低分子量タンパクのインスリンなどのホルモン,サイトカイン,そして高分子量の抗体へとその応用範囲は広がり,従来の低分子医薬品と別のmodalityとしてその位置を確立している.従来型modality(低分子医薬品,タンパク質医薬品)の医薬品開発においては,創薬標的の枯渇も問題視され始めており,抗体薬物複合体,核酸医薬,細胞医薬のような,new modalityの新薬開発も現在盛んに行われている.低分子医薬品やタンパク質医薬品の医薬品開発において,薬物動態薬力学研究を含めた薬物動態研究(広義の薬物動態研究)が大きな役割を果たしてきたことはいうまでもないことであり,現在も,最適な薬物治療のためにこれらの研究は継続的に行われている.一方で,new modalityに関しても,詳細な薬物動態研究の進展が,医薬品としての開発に不可欠であるが,未だに,多くの情報があるわけではない.本DISがこれらの薬物動態研究進展のための1つのハブとして機能できるように活動して行きたいと考えている.

 本DISとしては2017の年会において,new modalityとして,核酸医薬および細胞医薬を取り上げ,2件のシンポジウムを企画している.“細胞医薬における薬物動態研究の役割”では,細胞医薬研究の現状と薬物動態研究についての講演をしてお願いしている.“核酸創薬を促進する薬物動態研究”においては,上市品から最先端の核酸医薬の研究開発について講演をお願いしている.現在new modality開発に取り組んでいる薬物動態研究者だけでなく,本分野に興味を持つ研究者にとって,これらのシンポジウムが,今後の研究の推進力となれれば幸いである.