第30回ワークショップのご案内
第30回日本薬物動態学会ワークショップ
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ご挨拶
2016年5月12日(木)と13日(金)の両日,第30回日本薬物動態学会ワークショップ(WS)を千里ライフサイエンスセンター(大阪府豊中市)にて開催いたします.今回のテーマは,「外へ向かう薬物動態~臨床,疾患,新しい萌芽技術~」です.同時開催のショートコース(SC)と連動させ,ラボの外へ目を向けて,非臨床から臨床へのブリッジを実践いたします.
さて,1980年代に入社した当時の私にとっては,薬物動態とは,ラット分布試験で放射能を測定し,代謝物をNMRで分析し,申請概要に反映させるという仕事でした.ところが1990年以降,ヒト肝試料,LC/MS,TK,DDI・M&S理論の発展等が立て続けに起こりました.それまでの動態は,薬理や毒性の「参考データ」であったのが,直接に仲立ちをしてヒトにつなぐという大きな役割を担うこととなり,医薬品開発のkey playerになりました.その後,各種ガイドラインが整備され,動態分野は安定成長期に入った感が致します.そんな中で,医薬品開発全体の生産性が上がらない状況を再認識し,動態研究者の新たな使命感が高まってきたのが,10年ほど前からではないでしょうか.実際,2006年以降のWSの主題にも,「閉塞感」「ボトルネック」「変革」という言葉が目立つようになり,昨年のWSでは,外へ向かって,境界領域を攻めて研究開発をリードすべきだという学会としての啓蒙が浸透してきたことが感じられました.
2016年の薬物動態WSでも引き続き「外へ向かう」姿勢を大切にして,生産性の高い研究開発を追及したいと考えています.そこで今回は,周囲のup-to-dateな技術,治療現場のニーズといった外からの刺激を入れていただける先生方をお招きして,動態研究のあり方を議論したいと思っております.
早期臨床のセッションでは,北里大学の熊谷雄治先生から非臨床データに基づく臨床試験についてお話しいただき,同時に企業から非臨床試験パッケージの最新の考え方を発信いただくことで,効果的な研究開発のあり方について意見交換できればと考えています.疾患と薬物動態のセッションでは,臨床現場のトピックスについて,弘前大学の古郡規雄先生(精神神経領域),名古屋大学の安藤雄一先生(がん領域)からご講演いただいた後,これらの疾患領域にふさわしい医薬品の研究開発事例について,アカデミア,規制当局,企業から紹介していただき,議論したいと思います.新技術のセッションでは,大阪大学の松田史生先生の細胞内代謝フラックス解析,産業総合研究所の金森敏幸先生の細胞チップといった,今後薬物動態との融合が期待されるご研究をご紹介いただきます.
以上のように,基礎研究と臨床が向き合うような構成を企画しましたので,皆様にはこの中から是非新しい発見をしていただければ幸いです.今回ご講演をお引き受けいただいた先生方には,この場を借りて厚く御礼申し上げます.
今回は気分新たに大阪開催といたしました.ワークショップという名のとおり,聴衆参加型のカジュアルな会合ですので,多数の皆さまの参加を心からお待ちしております.