メインメニュー

第21回年会印象記

若手研究者シンポジウム「蛋白発現・機能のダイナミズム
基礎研究と臨床・創薬との接点 -」参加体験記

大日本住友製薬株式会社 新井 廉代

2006年12月1日に若手研究者シンポジウム「蛋白発現・機能のダイナミズム~基礎研究と臨床・創薬との接点~」に参加した.このシンポジウムは,2006年11月29日から12月1日に開催された第21回日本薬物動態学会年会の最終日に行われたもので,薬物動態学会では,初めての若手研究者向けのシンポジウムであった.座長および演者全員,若手研究者で構成されており,質疑応答も,若手研究者が中心となって進められた.

全部で6演題あり,最初は柳澤純先生から「核内レセプターの新機能と創薬の可能性」というタイトルで講演があった.核内レセプターとリガンド依存的に相互作用する因子,またはリガンド結合によって解離する因子の探索から,核内レセプターと転写共役因子の結合に基づいた新たなスクリーニング系の開発までについてといった幅広い内容であった.引き続き,金井昭夫先生の「Non-cording RNA研究における最前線」,甲斐広文先生の「病態発症に関わる膜蛋白質および分泌蛋白質の細胞内輸送機構」,梶裕之先生の「糖タンパク質の大規模解析」,奥野恭史先生の「ケミカルゲノミクスからの創薬インフォマティクス」の講演が行われた.これらは,今後の新規医薬品を開発していく上で非常に重要な知見であるものの,従来薬物動態研究者には深く踏み込めていない分野であるため,非常に興味深いものであった.今回,それぞれの分野における最先端の研究について知ることができ,本シンポジウムに参加出来たことを今後生かしていきたいと強く感じたのは私だけではないと思う.最後の演題は,唯一製薬企業からの講演で,福島民雄先生から「医薬品開発と肝毒性」というタイトルで話して頂いた.内容は,企業内での毒性についての見解や研究開発の進め方についてであり,企業の若手研究者にとっては他社の状況を窺う機会になったと同時に大学関係の若手研究者にとっては,企業における医薬品開発に対する考え方の一端を知る良い機会になったのではないかと思う. 

最先端の基礎的な研究から製薬企業での医薬品開発の考え方といった幅広い内容のシンポジウムであり,質疑応答も時間が足りないという盛況な会であった.本シンポジウムの内容が非常に濃く,若手シンポジウムであるということを忘れてしまうぐらいであった.このようなシンポジウムが今後も開催されれば,いつもは質疑応答に立つことの出来ないでいる若手研究者も積極的に参加していけるようになり,若手薬物動態研究者の活性化ひいては我が国における薬物動態研究のレベルの更なる向上が期待され,非常に楽しみである.