2010年4月22日(木)から23日(金)まで、第24回日本薬物動態学会ワークショップを慶応大学薬学部にて開催いたします。今回のワークショップのテーマは「医薬品開発におけるPPK/PDアプローチの有用性」としました。
医薬品開発において薬効評価や安全性評価を投与量ベースとは別に曝露量ベースで考えることは当たり前になっています。薬効評価においてはモデル動物で得られたPK/PDの関係性から適切なバイオマーカーを想定し、臨床初期にプルーフ オブ コンセプト(POC)を示すことができれば、確信を持って臨床開発を進めることができます。 PhaseTでは通常多時点のサンプリングでヒトのPKプロファイルを明らかにして、徐々に測定データとPPK解析に必要な患者背景情報(体表面積、腎機能など)を蓄積してPPKモデルが構築できると、臨床後期において、少ないサンプリングで曝露量の推定ができ、大きなn数でPKK/PDを解析するアプローチも可能になると考えられます。
安全性評価の面で見ますと前々回のワークショップで内藤先生が代謝物の安全性評価について、昨年2月に最終化されたFDAのガイダンス(Guidance for industry, Safety Testing of Drug Metabolites)の解説とともに話されたように毒性学的に問題となるヒト特異的代謝物が認められた場合には、第U相試験の前までに代謝物の安全性を動物で確認する必要があります。トキシコキネティクスは主に投与量に応じた曝露が確保されているかとの観点で未変化体を測定しますが、その前に代謝の種差を検討することで、場合によっては主要代謝物を測定対象に加え、未変化体のみならず代謝物の曝露量と毒性との関係を把握し考察することが可能になると考えられます。
臨床薬理試験は動物試験と異なり健常人や患者に配慮(採血量、採血回数、単回、反復投与、薬物相互作用等)したプロトコール作りが必要です。プロトコールの作成には開発、動態研究者、治験医師および臨床薬理学者等多くの研究者が関与し、より意義のあるものにしていく絶え間ない努力が必要です。
今回もRegulatory, AcademiaおよびIndustryからPK(PPK)/PD解析の実践例を発表していただき討議の内容(知見や考え方)が参加者に少しでも有意義なワークショップになるように企画しました。 また医薬品開発という大きなキーワードでは京都大の川上先生に「近未来における医薬品開発の変貌予測」という演題でお話を戴く予定です。そして、特別講演として大村恒雄先生(演題名 P450の薬物代謝活性の起源)、豊島聡先生(演題名 最近の医薬品審査の動向)および大橋京一先生(演題名 早期臨床試験におけるPK/PDアプローチ)に興味深いお話していただくことになっています。多くのかたが参加され、活発な討議を戴きますようにお願いいたします。
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