2009年4月23(木)から24日(金)まで,第23回日本薬物動態学会ワークショップを慶応大学薬学部にて開催いたします.今回のワークショップでは,「安全な医薬品の創製に向けたADME-TOXの新局面」を主題としました.薬物動態領域と安全性評価領域の協調が必須となる局面が益々拡大している潮流を踏まえ,より効果的な対応策についての理解を引き出し,その実践への契機となるような話題を準備しました.
以前にも増して,薬物動態領域と安全性評価領域の協調が求められる背景には,幾つかの要因があります.
・近年,臨床試験後期に莫大な研究資源を投入してきた医薬品が安全性の問題のためにドロップアウトする事態が続き,業界に大きなインパクトを与えたこと
・反応性代謝物について,安全性の問題追及へのニーズがさらに高まったこと
・2008年2月にFDAがヒト特異的代謝物の安全性評価に対するガイダンスを発効したこと
・臨床研究段階において,代謝の関連を含め,安全性の問題が原因でドロップアウトする比率が減少していないこと
・1日1回の服用でよい経口薬の輩出を狙うなら,長時間高濃度曝露に耐える安全性を併せ持たないといけないこと,など...
今回のワークショップにおいては,国内外における事例を多く共有して,薬物動態研究者が安全性研究者ともども,実務レベルでの視線でvividな議論ができるように心がけました.初日には「Synergy of DMPK and TOX for Discovery and Development of Safe Drug」をテーマとして,海外のメガファーマから4社(GSK,BMS,Merck,AZ)の講演を予定しています.この中では,ヒト特異的代謝物の安全性評価に対するガイダンスについて,FDAと米国の製薬業界が意見交換した会合(2008年9月)の内容にも触れてもらう予定です.過不足はなく,それでいてやり過ぎない対応について,所謂,目線合わせの把握をしておきたいと思います.
また,2日目には「ADME-TOX連携の新局面」をテーマとして,化合物の毒性の検出・判断のストラテジーについての基調講演的な話題提供のほか,国内製薬企業の事例を3社からご発表戴く予定です.代謝物の安全性試験や薬物による肝障害性の関連話題を踏まえ,薬物動態と安全性の更なる融合についての展望を議論したいと思います.
一方,薬物体内動態や安全性の課題点を臨床の初期において把握することは極めて重要でありますから,「探索的臨床試験の新しい動向」をもう一つのテーマとしました.特に,マイクロドーズ臨床試験では,未変化体を標的にするのか,代謝物の問題を考察するのか,試験の趣旨によって最適な分析方法の選択が必要です.多くの経験を持つ専門家のご講演に触れ,最適な試験企画について,現状認識をしっかりと共有しておきたいと思います.また,最近の話題として,分子イメージングによる疾患の診断・治療効果判定についてのアップデートを提示したいと思います.
さらに,ショートコースの内容であるトランスポーター研究に関連しますが,2008年9月に開催された「FDA Critical Path Transporter Workshop」の報告を紹介し,その趣意を正しく理解・共有したいと思います.
新たな理念と希望を込めた医薬品の開発が精力的に進められている中,薬物動態研究者と安全性研究者は,多くの関連分野の研究者と密接に連携し,より安全で利便性の高い医薬品の創製に取り組んでゆかねばなりません.先ずはADMETが一体となって,歩を共にしてゆきたいと願い,今回のワークショップを企画しました.薬物動態研究者はもちろんのこと,安全性研究者にも是非とも多数ご参加戴きたいと願っています.多くの皆さまに奮ってご参加戴き,多角的で活発な議論を戴きますように,何卒宜しくお願い申し上げます.
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