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第8期会長挨拶

本学会規定に従い、鎌滝哲也先生の会長任期が終了し、2004年1月から会長に就任いたしました。会員の皆様にご挨拶申し上げます。

日本薬物動態学会は1985年に発足して以来、今年で18年を迎えようとしていますが、年会、ワークショップなどの開催を通して、薬物の体内動態に関心をもつ方々の研究成果発表の場、研鑽・啓発の場として発展を遂げてきました。関連する生命科学の発展と深化に呼応して、本学会年会で発表される研究成果は常にその時代の先端を歩み、薬物動態領域においては世界をリードしてきました。

時代は大きな変革を迎えております。ヒトゲノム解析が完了した今日米国FDAは、テーラーメイド医療の確立に向けて、医薬品の有効性と安全性の指標としてのpharmacogenomicsの重要性を提言したドラフトを2003年11月に公表し、新薬開発に際して個体差の原因となるバイオマーカーとしての代謝酵素、トランスポーター、受容体などの遺伝子多型が開発候補薬の薬効・動態に及ぼす影響の有無についてのデーター提供を求める場合があるという行政指針を示しました。このドラフトは、世界のみならず我が国の製薬企業に大きなインパクトを与えております。これらの遺伝子多型が及ぼす薬物体内動態変動については、先見性のある会員が早くから本学会でその研究成果を報告し、かつ世界に発信しておりました。本学会がpharmacogenomicsに関して先駆的な役割を担ってきたことを誇りに思っております。しかし残念なことに、新薬開発の遂行と促進に必要なヒト試料の利用や様々なヒト試験の実施に際して、また、遺伝子多型などのバイオマーカーを用いたテーラーメイド治療の推進に際しては、国民的な理解を得るには至っていないのが現状です。この理解に向けて積極的に支援をすることが本学会の使命と思っております。

私は、鎌滝前会長が積極的に進めていた本学会のグローバル化の方向性を更に根付かせる所存です。英文誌Drug Metabolism and Pharmacokinetics (DMPK) の発行、2004年からのISSX理事就任、2005年にはISSXとのハワイ合同ミーティングの開催と杉山先生のISSX会長就任など本学会の国際化の流れを契機に、本学会の英文ホームページの充実、DMPKの電子ジャーナル化、2004年度開催の年会からの講演要旨の全面英文化を進めます。さらに、鎌滝前会長が遂行されてきた会員サービスのための事務局の運営強化,会長の諮問機関としての運営委員会,各委員会の具体的な活動の推進,などをさらに充実していきたいと思います。

どうか会員の皆様のご協力とご理解を頂けますよう心からお願いいたします.

辻 彰