Newsletter Volume 32, Number 1, 2017

受賞者からのコメント

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ベストポスター賞を受賞して

金沢大学医薬保健研究域 薬学系 薬物代謝安全性学研究室
中野正隆

 この度,松本で開催された第31回薬物動態学会におきましてベストポスター賞という栄誉ある賞を頂き,ご審査いただいた先生方を始め,有意義な議論を交わしていただいた皆様に心より御礼申し上げます.

 RNA上の塩基が別の塩基に置換するRNA編集は遺伝子の機能や発現に影響を与え得る転写後調節の一種ですが,薬物代謝酵素や薬物トランポーターといった薬物動態関連因子のRNA編集の重要性は分かっていません.最近,私たちは芳香族炭化水素受容体の発現制御にRNA編集が関与することを明らかにし(Nakano et al., J Biol Chem 291: 894-903, 2016),その研究成果を昨年の第30回薬物動態学会における第一回学生主催シンポジウムにおいて発表いたしました.その後,ジヒドロ葉酸還元酵素 (DHFR) 発現制御におけるRNA編集の関与に着目して研究を進め,本学会では「RNA編集が乳がんにおけるジヒドロ葉酸還元酵素の発現に与える影響」という演題で発表させていただきました.本研究ではDHFRの3’非翻訳領域の塩基がRNA編集を受けること,それによりDHFR mRNAが安定化し,DHFRタンパク発現量が増加することを見出しました.そして,非編集型と編集型のDHFR mRNAの安定性の違いが,microRNAによる発現制御に起因するものであることを示しました.さらに,この発現制御は乳がんの細胞増殖やDHFRを標的とするメトトレキサートに対する感受性にも影響を及ぼす可能性も見出しています.

 最後になりましたが,本研究の遂行に際してご指導いただいた当研究室の中島美紀教授,深見達基准教授,後藤紗希助教にこの場をお借りして深く御礼申し上げます.RNA編集が薬物動態に与える影響に関する検討は始まったばかりで,日々試行錯誤の連続ですが,今回の受賞を励みにより一層研究に励みたいと思います.