若者へのメッセージ
生物学と医学,薬学九州大学名誉教授
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はじめに
「生物学と医学,薬学」の標題で「若者へのメッセージ」を書かせていただく背景として自己紹介をさせていただきます.私は東京大学の理学部化学科を1953年に卒業し,静岡大学文理学部化学科の助手,大阪大学蛋白質研究所の助教授を経て,1970年に九州大学理学部生物学科の教授になりました.その後,1986年に九州大学医学部に新設された大学院課程「分子生命科学専攻」の教授となり,1994年に九州大学を定年退職しました.私は大学の学部課程で化学の教育を受けてから,化学,生物学,医学,の分野で教育,研究に携わる機会を得たわけで,これら三つの分野の大学院学生や若い研究者の人達と親しく接する得難い経験をしました.また,蛋白質研究所在職以来の私の主な研究対象はチトクロームP450でしたので,薬物代謝研究との関係で薬学分野の方々とも研究面でのお付き合いが多く,薬学部の若い研究者の人達とも親しく交際する機会を得ました.
静岡大学で化学科の助手になって以来42年間の大学教員生活で多くの若い学生や研究者と接した経験を通して私が得た一つの結論は,大学学部時代に受ける基礎教育の影響の大きなことでした.同じ理学部でも化学科を卒業した学生と生物学科を卒業した学生とでは同じ研究対象と向き合った時の対応に大きな違いがありましたし,医学部の卒業生は更に異なっていました.生物学が医学,薬学の重要な基礎の一つであることは現在の医学,薬学分野の研究者の方々は認めて下さっているだろうと思いますが,実際には生物学についての理解は学部時代の教育によって大きな違いがあるようです.薬物動態学分野の若い研究者の皆様方に現在の生物学についての理解を深めていただければ幸いと考え,このメッセージを書かせていただく次第です.
1.理学部生物学科と医学部,薬学部,農学部
日本の大学で生物学の教育と基礎研究を担当するのは理学部の生物学科です.30年ほど前に「バイオ」とか「バイオテクノロジー」と言う新語が流行り出した頃から我が国でも生物学が世間一般から関心を集めるようになりましたが,私が九州大学理学部の生物学科に教授として赴任した1970年当時には「生物学」は世間離れした物好きな学者が趣味のような研究をしている学問分野と社会から見なされていたようで,生物学科の卒業生には企業からの求人はほとんど無く,大学院を修了しても生物学の研究が続けられるような良い就職先は極めて少なかったのです.理学部生物学科と医学部,薬学部との教育,研究面での関係もほとんど無い大学が多かったようです.その理由の一つは日本の大学の生物学科の成り立ちにあったと思います.
明治時代の初めに日本の大学制度が確立して帝国大学が設立された時に,医学部,農学部,理学部生物学科という生物系学部の間で,人の病気とそれに関係する微生物の研究は医学部,栽培植物と醗酵産業に関係する微生物と水産業の研究は農学部,医学部や農学部が扱わない生物の研究は理学部生物学科,というような研究分野の分担ができたようです.医学部ではヒトの生理や病気の研究のためにラット,ウサギなどが使われましたから,それら高等動物の研究は医学部の守備範囲になったのでしょうし,牛,豚などの家畜や漁業の対象になる魚類は農学部が担当しましたので,理学部生物学科で遺伝学,生理学,発生学などの講座が主な研究対象とした動物はカエル,イモリ,ヒトデ,というような実用と無関係な下等動物ばかりになりました.酵母などの微生物も生物学科の研究対象外でした.医学部や農学部とは研究対象がはっきりと異なっていたのです.比較的最近まで医学部や薬学部と理学部生物学科の間で教育,研究面での交流がほとんど無かったのもこのような事情が大きな理由だったように思います.
前の大戦に先立つ1930年頃から世界の生物学の研究分野で大きな変化が始まりました.まず医学の生理学分野から生化学という新しい大きな学問分野が成長しました.1940年代になると細胞生物学,分子遺伝学という新しい学問分野が誕生して急速に発展し,これらの分野では生物学と医学の間の垣根が取り払われました.分子遺伝学は更に分子生物学という大きな学問分野に発展します.これらの新しい生物系学問分野の発展を牽引したのはアメリカの学者達で,1945年に終わった戦争で荒廃したヨーロッパの国々や日本は生物学のこの新しい潮流に乗り遅れました.特に日本の国立大学は,法人化された現在と違って,大学設置法という法律で学部,学科の構成や講座数,講座名までが定められていて,新しい学問分野の誕生に各大学が独自に対応する自由度が乏しかったのです.戦後の国立大学理学部の生物学科の中では大阪大学だけが発足当時から生化学,生物物理学分野の講座を設けていましたが,他の大学の生物学科は生理学,遺伝学,発生学,生態学という戦前と同じ講座構成のままで時代に取り残されていました.日本の国立大学理学部の生物学科が新しい時代に対応する形になり,医学部や薬学部との関係も深まったのは1980年代以降だと思います.
2.生物学の主題:生物の共通性と多様性
現在では薬学分野の若い研究者の方々は生物学が重要な基礎知識であることを認めて下さっていると思いますが,生物学の内容としては生化学,分子生物学,細胞生物学などを考えられるかと思います.しかし,生物学はもっと幅広い学問です.生物は微生物から動物,植物まで多種多様ですが,生物学は全ての生物に共通する性質に注目する研究分野と種々の生物の多様性を重視する研究分野とに大別できます.細胞増殖,遺伝情報の複製,蛋白質の合成,解糖系,電子伝達系を利用するATPの合成,など生命現象の多くは細菌から真菌,植物,動物まで基本的には同じで,生化学,分子生物学はこのような全ての生物に共通する生命現象の解明を目指す研究で大きな成果をあげたのですが,生物の多様性についての研究も生物学においては同じくらい重要なものです.生物の多様性の研究は生物分類学,生態学などの伝統的学問分野から始まり,やがて代謝活性などの多様性についての生化学的研究が比較生化学という研究分野を作り,最近になって種々の生物のゲノムが解読されて遺伝子レベルでも生物の多様性の研究ができるようになりました.生化学,分子生物学も生物の多様性も研究対象にするようになっています.
生物の多様性は30億年ほど前に地球上に誕生した一つの生命がその後の長年の進化の過程で多種多様な生物に分化した結果です.始めは細菌,古細菌という原核生物だけだった生物界に我々の先祖である真核生物が現れてからも約20億年もの長い年月が過ぎています.この間に真核生物は多細胞化し,複雑な体制をもつ動物,植物に進化し,様々な環境の変化に適応しながら進化し多様化して多くの生物種が誕生し現在に至っているわけです.動物についても単細胞の原生動物からヒトを含む脊椎動物まで百万種以上に分類されている多種多様の種が現存します.生物を研究対象とする場合にはこの多様性も重要な研究課題です.
ヒトの病気についての医学上の様々な問題の研究においてマウス,ラットなど古くから用いられて来た実験動物に加えて,現在ではショウジョウバエ,線虫などヒトとは縁遠い生物も利用されていることは御承知の通りです.それら下等生物でも基本的な生命現象とその仕組みはヒトと共通であることに依存しているわけで,単細胞生物である酵母さえもヒトの老化現象の分子機構などの研究に利用されています.最近の例では,ショウジョウバエの正常な発生に必要な遺伝子として発生生物学分野の研究者によって1980年代に発見され “Toll” と名付けられていた遺伝子をあげることができます.Tollは発見後もその機能が不明でしたので昆虫を研究対象とする発生生物学の研究者の間でしか知られていなかったのですが,1997年になって塩基配列がTollに類似した遺伝子がマウスなど哺乳動物にも存在することが動物のゲノム解析の過程で偶然に見出されました.間もなくその遺伝子は動物の自然免疫系が細菌,ビールスなどに対応するのに必須な受容体の遺伝子であることが確認され,受容体はToll-like Receptor (TLR)と名付けられました.TLRは免疫学での重要な研究対象となり,ヒトには10種類のTLRが存在することなどが確かめられて,古くから知られながら仕組みがよくわからなかった自然免疫の分子機構を明らかにする医学分野の重要な研究に発展しました.昆虫などの下等生物から高度に進化したヒトなどの脊椎動物まで多くの共通な生命現象が存在している一例です.
しかし一方で,医学,薬学分野の研究でも生物の多様性に留意しなければならない問題が数多くあります.薬学分野の方々には薬物代謝でおなじみのチトクロームP450は酵母から動物,植物まですべての真核生物に存在しますが,その生理機能が生物により極めて多様であることはヒトのゲノムには57個のP450遺伝子があるのに対して酵母 (Saccharomyces cerevisiae) にはP450遺伝子は3個しかないことからも明らかです.酵母はP450が関係するヒトの病気のモデルにはなり得ません.P450は真核生物の進化に伴って著しく機能が分化し多様化した酵素の代表例で,例えばコレステロールからP450の触媒する反応で副腎皮質ホルモン,性ホルモンが合成される活性は脊椎動物にしかありません.昆虫も変態に必要なホルモン物質をコレステロールから合成しますが,この合成経路に関与するP450は脊椎動物とは全く別個なものですから昆虫をモデルとして利用してヒトのステロイドホルモン合成の研究はできないでしょう.薬物のような異物を代謝するP450の場合でもP450の種類や代謝活性は動物の種類により極めて多様で,マウスやラットのように薬物代謝の研究に広く用いられている実験動物でさえ薬物の種類によってはヒトの薬物代謝の良いモデルにならない場合があることは御承知と思います.
ヒトや家畜,あるいは栽培植物への使用を目的として開発され使用されて来た薬剤が野生生物あるいは自然植生に予想外の悪影響を及ぼして使用禁止になる例は現在でも数多くありますが,これも薬剤の研究開発過程で生物の多様性が十分に検討されなかった結果と思われます.特に広範囲の農地に使用される殺虫剤や除草剤は自然環境への影響が大きいので度々問題を起こしています.現在では農薬の研究,開発過程で野生の哺乳動物はもちろん鳥類,魚類,両生類などへの直接の影響は十分検討されているのでしょうが,それらの野生生物を生態系の底辺で支えている微小な種々の生物への影響までは調べられていないのが実情だと思います.生態系の底辺に位置する生物が死滅すれば生態系全体が崩壊します.自然界での生態系についての研究は生態学分野の研究者の地味な研究で支えられていて,興味本位の役に立たない研究のように見なされることが多いのですが,生物の多様性の観点からももっと評価されてよい研究分野だと思います.
3.生物学の中心的ドグマ:生物の進化
Charles Darwinが1859年に出版した書 “On the Origin of Species” で提唱した進化論は現在でも生物学の中核となっているドグマです.生物学の諸問題を考える場合においての “進化” の重要性は,ショウジョウバエについての研究で集団遺伝学の基礎を確立したTheodosius Dobzhanskyが述べた “Nothing in biology makes sense except in the light of evolution.” という言葉によく表現されています.生物進化についての研究はDarwin以来比較的最近までは地球上の各地に分布する古生代から新生代にわたる地層中に見出される動植物の化石の記録に基づく古生物学が主流でしたので「生物進化学」は生物学の中でむしろ古典的な学問領域のように思われて来ました.しかし蛋白質の一次構造の研究が進んで,異なる生物種の間で同じ蛋白質のアミノ酸配列の置換程度を調べて比較すればそれら生物種が進化の過程で分かれた年代を推定する “分子時計” として利用できることが1970年代に明らかになって以来,生化学者も興味を持って生物進化の研究に参入しました.化石そのものの研究も電子顕微鏡による観察で化石化した生物組織について細胞レベルの微細構造まで検討できるようになり,最近は種々の生物のゲノムの解析が進みましたので生物種間で何種類もの蛋白質について遺伝子の塩基置換を比較することによって古生代から現存の生物に至る進化系統樹を作成する分子生物学的研究も可能になりました.化石や化石を含む地層中の鉱物の特定の元素の同位体組成から化石となった生物が棲息していた年代や当時の大気組成,気温,水温などの環境を推定する地球科学的研究も格段に進歩し,生物進化の研究は化石の形態観察だけに依存していた30〜40年前の時代とは様変わりした新しい研究分野となっています.
このように生物進化の研究は生物学の中心的な研究分野であり最近の発展は目覚ましいものがあります.しかし,その研究の重要性は医学,薬学分野の研究者にはまだあまり知られていないように思えますので,生物進化の知識によって研究が予想外の進展を見せた最近の一例として,化学物質による動物肝臓の薬物代謝型P450の誘導増加の研究から見出された転写因子AhR (Arylhydrocarbon receptor) の例をあげておきます.AhRはベンゾピレン,3−メチルコラントレンなどの多環芳香族炭化水素(PAH) の実験動物への投与によって肝臓ミクロソームのP450 1A1 が著しく誘導増加する現象の研究からそれら誘導物質の受容体として1970年代半ばに見出されたもので,1980年代の研究でP450 1A1遺伝子の転写調節因子であることが明らかになりました.AhRは1988年に精製され,1992年にはcDNAのクローニングも報告されてPAHによるP450 1A1 の誘導現象の研究はP450の研究分野での大きな研究成果の一つとなりました.
ところが色々な生物での研究が進みますと,AhRの遺伝子はショウジョウバエ,線虫などはもちろん,ウニ,イソギンチャク,二枚貝など多くの下等生物のゲノムにも存在することが見出されました.しかし,AhRがPAHに結合する能力を持つのは魚類以上の脊椎動物だけで,ショウジョウバエや線虫などに存在するAhRはPAHに対する結合能がありませんでしたし,それらの動物ではPAHによるP450の誘導増加も見られませんでした.AhRが特定のP450遺伝子のPAHによる発現に関与するようになったのは古生代のデボン紀に脊椎動物である魚類が出現した時からのようで,それ以前にはAhRは多くの動物で全く別の機能を果たしていたと考えられるようになったのです.ショウジョウバエや線虫でのAhRの機能についての研究はまだ始まったばかりですが,ヒトなどの脊椎動物でもAhRにPAHによるP450遺伝子の誘導発現以外の機能もあるのではないかという示唆は重要でした.1995年にAhR遺伝子を欠損したマウスが初めて作製され,AhRの生理機能の再検討が世界のあちこちの研究室で始まりました.AhR-/- マウスは生育でき繁殖もするのですが,野生型AhR+/+ マウスとの比較からAhRの様々な機能が明らかになりつつあり,特に免疫系の正常な機能の発現,維持にAhRが大きな役割を果たしていることが見出されて研究が進められています.これなどは生物進化的興味からの研究が医学上の問題にも大きな寄与をする可能性を示す一例でしょう.その他,結核菌はヒトへの感染能力を獲得する前には土壌細菌だったとか,マラリア原虫はヒトの病原体となる前には葉緑体を持っていて光合成をしていたらしいなど,最近の生物進化の研究では多くの驚くべき結果が次々と報告されています.近い将来には生物進化の研究が医学や薬学の研究にも大きな影響を及ぼすようになると思われます.
4.生物界においての “共生” の重要性
ウシ,ヒツジなどの草食動物では腸内に共生している細菌が食物の消化に重要な役割を果たしていることが古くから知られていましたが,ヒトの健康に腸内細菌が大きな影響を及ぼしているらしいことが10年くらい前からにわかに大きな話題になって現在盛んに研究が進められています.植物の世界でも土壌中の微生物,特に真菌類,が植物の根から分泌される有機酸などを栄養として繁殖する一方で植物の根が土壌から重金属イオンやリン酸などの栄養分を吸収するのに寄与していることが最近になって注目されるようになりました.このような生物界においての “共生” は生態学では古くから注目され,自然界での生態系の維持にも重要であることが認められていた現象ですが,医学,農学などの研究分野においても注目されるようになって来たのです.その結果として,医学の分野では腸内細菌の組成に大きな個人差があることが明らかになって免疫機能など健康との関係が研究されていますし,農学の分野では栽培植物への病原性真菌の感染を防ぐために散布する抗真菌性農薬が土壌中の微生物に及ぼす影響などが議論されるようになりました.生態学分野の研究者によって野外で観察されて来た多様な動植物の共生関係による安定した生態系の形成と維持が医学や農業においても問題とされるようになったようです.
人類は生活環境を改善して衛生的で快適な生活をすることを目指してきました.そのような努力の結果として都市の住民の生活ではノミ,シラミなど人類の誕生以来ヒトに寄生して共存して来た害虫,寄生虫はいなくなり,蚊,ハエなど身近にいた厄介な昆虫類も住居の中にはいなくなりましたし,衛生状態の改善で微生物による伝染病も防がれて市民の健康の向上と寿命の延長がもたらされました.しかし,このような人工的な生活環境が作られてからの期間はアフリカの原野でヒトの祖先が誕生して以来の数十万年を越える年月に比べれば極めて短いもので,生物としてのヒトが生活環境の大きな変化に適応するには全く不十分な短期間です.日本を含む世界の先進国でアレルギー疾患の患者の大幅な増加が問題になっていますが,生活環境があまりに清潔になり過ぎて,幼児の時から体内に侵入して来る様々な天然の抗原を失った免疫系が異常を来していることによるという説も出されています.ヒト以外の生物は微生物を含めてすべて生活環境から排除しようとして来た衛生意識が再検討される必要があるかも知れません.
農業でも見渡す限りの広大な農地に毎年同じ作物を栽培し,化学肥料を使って栽培植物の生長を促進し,雑草や昆虫などは農薬を使って完全に駆除し排除してしまうという近代農法が先進国では広く普及しました.大型農業機械の導入による農業の大規模化と省力化も進められた結果として世界の人口増加に十分見合うだけの食料を供給して来れたことは大きな成果ですが,それによる自然環境の破壊と野生生物の絶滅が問題になっていることは御承知の通りです.環境破壊を最小限に止めながら世界中で増加し続ける人口に見合う食料の増産も進めるには生態系についての知識が欠かせません.現在のところ医学や薬学とは関係の薄い研究領域ですが,生物学の中では重要な地位を占めている “生態学” についても関心を持っていただければ幸いです.
5.生物学と医学,薬学
医学,薬学の諸問題の研究に生物学の知識が必須であることが現在では広く認められていることは “Biomedical Science” という言葉が使われるようになっていることからも明らかですし,理学部の生物学科の研究室でも医学部,薬学部と同じようにマウスなどの実験動物や動物組織の培養細胞を使う研究が普通に行われるようになっています.つい30年か40年前にはカエル,イモリなどの下等動物だけを研究対象とし,世間の多くの人から “役に立たない学問”と思われていた生物学が医学の進歩に必須の学問として扱われるようになったのは結構なことですが,基礎科学である生物学がヒトの病気の予防や治療を目的とする実学である医学や薬学と一体化してしまうことは必ずしも良いこととは思えません.生物学は実用を主な目的とはしない学問であることを明確にしておくことが生物学の発展のためには必要だと思いますし,そのような意識で学生を教育し基礎研究に徹することが理学部の生物学科の役目であり,医学,薬学などの実学分野にも大きな貢献をする結果になると考えます.
「生物の多様性」「生物の進化」「自然界での生態系」などは幅広い生物学の中でも医学,薬学分野の研究者にはなじみの薄い研究分野かと思いますが,生物学の中で重要な地位を占めて活発な研究が進められている分野ですし,そのような分野の研究成果が医学,薬学の研究に思いがけない大きな寄与をする可能性があることは先に記しました.薬物動態学分野の若い研究者の方々に生物学の様々な分野についても関心を持っていただければ幸いと考えてこの小文を書いた次第です.