Newsletter Volume 40, Number 1, 2025

Newsletter Volume 40, Number 1, 2025

はじめに

 新しく2025年が始まり,本ニュースレターも第1号を迎えました.今年もさまざまな出来事が世界を動かしています.ガザ停戦やトランプ前大統領の再登板が話題となる一方,ロシアによるウクライナ侵攻で始まった戦争はいまだに終結を迎えていません.国際情勢の不安定さを日々感じる中で,科学技術の発展が平和と持続可能な社会にどのように貢献できるのかを改めて考えさせられます.

 私自身,4月からの英国での共同研究に向けて引越し準備を進めていますが,スエズ運河の通行制限により船便の輸送に4~5カ月を要すること,ロシア上空を飛べない影響で航空輸送コストが数年前より大幅に上昇していることなどを耳にし,世界の動きが身近なところに影響を及ぼしていることを実感しました.

 先日,恩師とお話しする機会があり,「世界を知るだけでなく,世界の研究者の輪の中に入り,対等に議論することが大切だ」との言葉をいただきました.薬物動態研究の分野においても,国際的なネットワークを築き,研究を発展させることの重要性を改めて感じています.JSSXとしてもISSXとの連携をさらに深めつつ,個々の研究者が積極的に活動できる環境を築いていくことが重要と思います.今年のJSSX年会は京都で開催されますが,対面での活発な議論を通じて,新たな発見やつながりが生まれることを期待しております.

 本ニュースレターでは,最新の研究成果や学会活動の報告など,皆様に有益な情報をお届けして参ります.引き続き,ご支援・ご協力のほど,どうぞよろしくお願い申し上げます.(T.Y.)

 

動態研究に取り組むNEW POWER

世界一の薬物動態研究者を追いかけた先で見た,創薬民主化の最前線

慶應義塾大学薬学部 薬剤学講座
土谷聡耀

 慶應義塾大学薬学部の土谷聡耀と申します.このたびは,日本薬物動態学会ニュースレターへの寄稿の機会を下さった編集委員の皆様に心より感謝申し上げます.私は2012年に慶應義塾大学薬学部薬学科に入学し,2018年に薬剤師国家資格を取得すると同時に博士課程へ進学し,2022年3月に学位を取得しました.その後,中国・上海にある上海科技大学iHuman研究所でポスドクとして研究活動を行い,2024年8月より慶應義塾大学薬学部の薬剤学講座に着任し,現在に至っています.学部時代を含めると,今の研究室は3つ目の所属先となります.・・・(続きはNLホームページへ/会員専用

 

今さら聞けない標的タンパク質分解誘導剤(Targeted protein degrader, TPDの体内動態研究

第1回:序論:Targeted protein degraderのコンセプト

アステラス製薬株式会社 非臨床バイオメディカルサイエンス
大﨑史雄

 はじめまして!New modalityの研究開発における薬物動態研究入門の第三弾は,「標的タンパク質分解誘導剤(Targeted protein degrader)」です.Targeted protein degraderは,主にがん領域における研究開発がここ数年で活発化しており,期待・注目されている新たな「低分子」modalityです.本シリーズでは,その特徴的な性質を薬物動態およびトランスレーショナル研究の観点からどのように評価し,臨床での有効性を予測していくかについて,全三回にわたりご紹介していきたいと思います.第一回は,本連載の導入として,Targeted protein degraderがどのようなmodalityかについてご説明します.・・・(続きはNLホームページへ/会員専用