Newsletter Volume 39, Number 5, 2024

Newsletter Volume 39, Number 5, 2024

はじめに

 今年の夏の猛暑も記憶に残るものがございましたが,少しずつ秋らしくなってまいりました.この夏はオリンピック,パラリンピックでアスリートの熱い戦いに興奮し,ドジャース大谷選手の輝かしい活躍のニュースと,私たちに夢を抱かせる話題が多くありましたね.夢と言えば,先日,久しぶりに歴史あるコンファレンスに参加させていただきまして,コンファレンス中の議論では,「夢を語る」事を大事にするというのが印象的でした.確かに,夢を語られれば,実現してほしいと思うのが人情ですし,同じ悩みを共有したり,解決策を考えたり,議論が広がり,思いもよらないアイデアに出会うこともできるかもしれません.製薬会社に入社した当時の私の夢はと言いますと,代謝物の構造解析が業務でしたので,化合物の構造を見れば代謝位置が分かる研究者になりたいと思っておりました.予測不能な代謝反応が起こった時のわくわく感や構造解析へのモチベーションも思い出し,懐かしさと共に,気が引き締まる思いでした.コロナ禍が明け,対面での議論の場も戻ってきましたので,実現したい夢という切り口でとことん語り合ってみるのも面白いかもしれませんね.多様化する創薬モダリティーに最前線で対峙する薬物動態研究では,様々な分野の技術を取り込み,タイムリーに活用する必要がありますので,実現したい夢や未来像を明確に持って,新しい技術やモダリティーと向き合っていかなければならないと思います.研究の現場で夢を語る機会は乏しいのが現状かもしれませんが,皆様の夢は何でしょうか?忙しい日々ではありますが,たまには一息ついて思いを馳せてみるのもいいですね.(K.I.)

 

トピックス

薬物動態学会ニュースレター発:レギュラトリーサイエンス情報

 ガイドライン及びICHでの規制調和活動の最新動向など,薬物動態領域に関わるレギュラトリーサイエンス情報について,ニュースレター委員会より報告します.・・・(続きはNLホームページへ/会員専用

 

動態研究に取り組むNEW POWER

iPS細胞やゲノム編集技術を用いた新たな腸・肝細胞モデルの開発

立命館大学薬学部 分子薬物動態学研究室
根来亮介

 立命館大学薬学部の根来亮介と申します.この度は,日本薬物動態学会ニュースレター「動態研究に取り組むNEW POWER」へ寄稿する機会をいただき,編集委員の皆様をはじめ関係者の皆様に感謝申し上げます.私は,2009年に摂南大学薬学部に入学し,前田定秋教授(当時)が主宰されていた薬物治療学研究室に所属していました.摂南大学卒業後は,大阪大学大学院薬学研究科に進学し,水口裕之教授が主宰されている分子生物学分野で学び2019年3月に学位を取得しました.同年4月から,藤田卓也教授が主宰されている立命館大学薬学部の分子薬物動態学研究室に助教として着任し,現在にいたります.本稿では,これまでの研究成果や今後の取り組みについて紹介いたします.・・・(続きはNLホームページへ/会員専用

 

技術・研究材料紹介(企業広告)

タンデム四重極質量分析計による高感度かつ高速なターゲットDESIイメージングによる薬物/代謝物の可視化と定量化

Waters Corporation

 薬物動態研究における組織内薬物濃度測定では,一般的にLC-MS/MSが用いられるが,試料調整時に組織を均一化することにより化合物の分布情報は失われてしまう.一方,脱離エレクトロスプレーイオン化(DESI)質量分析イメージング(MSI)技術を用いることにより,放射性標識無しに化合物の分布情報を可視化および定量化が可能となる.本研究では,DESI MSIを用いたナルコレプシー治療薬であるピトリサントの薬効容量および毒性容量投与後の主要臓器における未変化体,主要代謝物および内因性代謝物の分布試験結果を示す.・・・(続きはNLホームページへ