Newsletter Volume 39, Number 2, 2024

Newsletter Volume 39, Number 2, 2024

はじめに

 桜の季節,東京では入学式に合わせたかのような開花となり,映える新年度となりました.桜といえば反射的に花見酒,となりがちですが,桜餅と煎茶の組み合わせもまた,格別です.さて,皆さんは桜餅を包み込む桜の葉は食べられますでしょうか.迷いつつも,葉を食べるなんて・・・と,食べたことのない方もおられるのではないでしょうか.私はそうだったのですが,好きな道明寺桜餅の葉が剥がしにくい,という問題がありました.ある時面倒になってしまい,意を決して食べてみると,葉の苦味を含んだ味わいと塩気との出会いが,桜餅の美味しさをより深いものにしてくれることを知りました.

 桜は,ポトマック河畔の桜並木に代表されるように日米交流の象徴ともなっていますが,今年は9月に日米合同での年会がハワイで開催され,大いに盛り上がることが期待されます.一方で,開催地の魅力などに心が惹かれつつも,多忙な業務との兼ね合いで迷われている方もいるかもしれません.しかし,いつもとは違う研究者との出会いが,研究の面白さをより深いものにするきっかけになるはずです.迷ったら,go!(M.T.)

 

今さら聞けない抗体薬物複合体(Antibody Drug Conjugate: ADC)の体内動態研究

第4回:ADCのイメージング ~腫瘍組織におけるADCの挙動を探る~

第一三共株式会社 薬物動態研究所
永井陽子,緒方聖也,浦崎葉子

 こんにちは!前々回から「抗体薬物複合体(Antibody Drug Conjugate: ADC)の薬物動態研究入門」についてお届けしています.第4回目の今回は,ADCのイメージングについてお伝えしたいと思います.

 癌領域におけるADCの基本的なコンセプトは,抗体の高い標的選択性を利用して腫瘍へ高活性薬剤のデリバリーを効率的に行うことで正常組織への曝露を低減し,治療域の拡大を図ることです(第一回をご参照ください).トラスツズマブ・デルクステカン(T-DXd)は,抗ヒト上皮成長因子受容体タイプ2(HER2)抗体とトポイソメラーゼI阻害剤DXdで構成されるADCです.想定される主な作用機序としては次のようになります.①癌細胞膜上に発現するHER2にT-DXdが結合することにより内在化し,リソソームへ移行する ②リソソームにおけるプロテアーゼによりDXdが遊離する ③DXdが核内に移行して,トポイソメラーゼI阻害により癌細胞のアポトーシスを起こす.第2回で触れましたように,T-DXdをHER2陽性腫瘍移植マウスに投与後,血漿中T-DXd濃度や総抗体濃度および腫瘍中DXd濃度を測定することで,血漿中でのADC濃度の変動や,腫瘍組織中にDXdが存在すること及びその推移(変動)を確認しています.・・・(続きはNLホームページへ/会員専用