Newsletter Volume 38, Number 6, 2023
はじめに
近年,人工知能(AI)の活用が広がり,我々の生活の多くの面でその力を借りるようになりました.医療現場では診断支援や疾患予測に,科学技術の分野では大量のデータを処理し新たな発見を導き出す強力なツールとしてAIが利用されています.その1つがOpenAI社の開発した自然言語処理AI「ChatGPT」で,大量のテキストデータから学習し,自然な対話を生成するツールです.ChatGPTは今や我々の身近な存在となり,すでに多くの方々がその便利さを享受しているのではないでしょうか.
ChatGPTを活用する場合,AIに与える質問や命令を意味する「プロンプト」の設定が重要となります.プロンプトは我々の求める情報をChatGPTに正確に伝える手段であり,どのような情報を求めているのか,どのように問いかけるべきかを精緻に設定することが求められます.ChatGPTの活躍はまだ始まったばかりで全貌は見えていませんが,可能性は計り知れません.ChatGPTを薬物動態学の分野において活用し,最適なプロンプトを設定できたら,新たな治療法の発見や画期的な新薬の開発に繋がることも夢ではありません.実はこの「はじめに」の原稿自体もChatGPTの助けを借りて作成しており,まさに我々がAIと共に新たな道を切り開いていると実感できます.
今号のニュースレターも充実した内容となっていますので,ぜひお楽しみ下さい.(Y.K.)
トピックス
薬物動態学会ニュースレター発:レギュラトリーサイエンス情報
ガイドライン及びICHでの規制調和活動の最新動向など,薬物動態領域に関わるレギュラトリーサイエンス情報について,ニュースレター委員会より報告します.・・・(続きはNLホームページへ/会員専用)
受賞者からのコメント
学会賞を受賞して
名古屋市立大学大学院薬学研究科 臨床薬学分野
松永民秀
この度,「薬物動態研究に有用なヒトiPS細胞由来細胞の開発」という題目で,日本薬物動態学会・学会賞の栄誉を賜りました.日本薬物動態学会会長の山下富義先生,理事会の先生方および学会賞等選考委員会の先生方を始め,関係の諸先生方に心より感謝を申し上げます.また,本賞にご推薦を賜りました琉球大学病院 教授・薬剤部長の中村克徳先生に,厚く御礼を申し上げます.・・・(続きはNLホームページへ)
奨励賞を受賞して
千葉大学大学院薬学研究院 薬物学研究室
畠山浩人
この度,「免疫チェックポイント阻害剤の薬効・副作用に影響する薬物動態要因に関する研究」という題目で令和5年度日本薬物動態学会奨励賞を賜り,大変光栄に感じております.推薦を頂きました千葉大学の樋坂章博先生,並びに日本薬物動態学会会長,副会長,理事,選考委員の先生方に深く御礼申し上げます.私が本研究を開始したのは,2016年1月に米国留学から帰国し千葉大学大学院薬学研究院の樋坂研究室に加えて頂いてからです.・・・(続きはNLホームページへ)
奨励賞を受賞して
金沢大学医薬保健研究域薬学系 分子薬物治療学研究室
増尾友佑
このたび「構造選択的メタボロミクスによる膜輸送体の生体内基質同定」という題目で令和5年度日本薬物動態学会奨励賞という名誉ある賞を受賞でき,光栄に感じております.奨励賞に推薦くださいました金沢大学の加藤将夫教授をはじめ,選考委員の先生方,実行委員の先生方に厚くお礼申し上げます.本稿では受賞対象となりました,膜輸送体の機能解析に最適化したメタボロミクスについて紹介致します.・・・(続きはNLホームページへ)
創薬貢献・奨励賞を受賞して
大塚製薬株式会社
笹原克則
この度は,「Robotics,IT,機械学習及び計算化学を用いた創薬スクリーニング基盤研究」という題目で令和5年度創薬貢献・奨励賞を賜りました.この大変名誉ある賞をいただき,身に余る光栄です.日本薬物動態学会役員,選考委員会の先生方,ならびに本賞にご推薦くださいました大塚製薬株式会社 樫山英二博士に厚く御礼申し上げます.私はこれまでの研究生活の中でin silicoを活用した研究に取り組んでまいりました.誠に僭越ながら,以下で私の研究について,ご紹介をさせて頂きます.・・・(続きはNLホームページへ)
学会 道しるべ
25th North American ISSXに参加して
東京大学大学院薬学系研究科 分子薬物動態学教室
橋本芳樹
2023年9月10日-13日,米国マサチューセッツ州ボストンにて25th North American ISSX Meetingが開催されました.この度私は,2023年度(後期)若手研究者海外発表支援事業にご採択いただき,本学会に参加いたしました.選考にあたり,日本薬物動態学会会長の山下富義先生,国際化推進委員会委員長の中島美紀先生をはじめ,選考委員会の先生方に厚くお礼申し上げます.本学会は私にとって初めての国際学会への参加であると同時に,初めての海外渡航でもあり,貴重な経験をすることができました.拙筆ながら読者の皆さまにその経験をお伝えできれば嬉しく思います.・・・(続きはNLホームページへ)
2023年度(後期)若手研究者海外発表支援を受けて
名古屋市立大学大学院薬学研究科 薬物動態制御学分野
間竹 勇
私は,2023年9月10-13日に米国マサチューセッツ州ボストンにて開催された25th NA ISSX meetingに,日本薬物動態学会の若手研究者海外発表支援を得て参加し,「FUNCTIONAL CHARACTERIZATION OF ENT2/SLC29A2 AS A URIC ACID TRANSPORTER」という題目にてポスター発表を行いました.尿酸の体内動態に関しては,その高い水溶性から生体膜透過過程においてトランスポーターの関与が知られています.そのため,尿酸の体内動態の理解のためには,尿酸トランスポーターの把握が重要ですが,尿酸産生臓器である肝臓や小腸での尿酸の血中移行に関わるトランスポーターの情報は乏しいのが現状です.・・・(続きはNLホームページへ)