Newsletter Volume 38, Number 2, 2023

Newsletter Volume 38, Number 2, 2023

はじめに

 新年度がスタートし,対面での入学式や入社式のニュースを耳にしました.日本薬学会第143年会には8,000名を超える参加者があり,盛会のうちに終了しました.会場の北海道大学では,あちらこちらで熱い議論が交わされる光景を目にすることができ,コロナ感染症の第5類移行後の新たな展望を予感するこの頃です.

 ニュースレター前号からの約2カ月の間にも,ロシアによるウクライナ侵攻から1年経過やトルコ・シリア大地震の発生等の心が沈むニュースが続きました.そんな中でワールド・ベースボール・クラシックでの侍ジャパンの活躍に勇気づけられた方が多かったのではないでしょうか.決勝前の円陣での「僕から一個だけ.憧れるのをやめましょう」から始まる大谷翔平選手のスピーチは心に深く刻まれました.「ファーストにゴールドシュミットがいたり,センターを見ればマイク・トラウトがいるし,外野にムーキー・ベッツがいたり,野球をやっていたら誰しも聞いたことがあるような選手たちがいると思う.憧れてしまっては超えられないので,僕らは今日超えるために,トップになるために来たので.今日一日だけは彼らへの憧れを捨てて,勝つことだけ考えていきましょう.」「さあ,行こう!」で締めくくった32秒のスピーチ.

 コロナ禍の収束とともに,2023年にはシトクロムP450国際会議,2024年にはISSX北米大会との国際合同大会が開催されます.偉大な基礎研究や臨床開発へのリスペクトを持って研鑽を積み,それらを超える成果を生み出すために,JSSXの一員として「さあ,行こう!」(N.N.)

 

特集記事のご紹介

動態研究に取り組むNEW POWER

 産学問わず今後の活躍が大いに期待される若手の先生に御登場いただき,会員の皆様に広く先生を知っていただく機会とするとともに,新たな活力・刺激を本会にもたらすことを趣旨としています.執筆いただく先生には,御自身のこれまでの研究成果や今後の目標について、これまでの御略歴を交えながら紹介をしていただくとともに,本会・本分野への期待なども綴っていただきます.本コーナーが,本会において『新たな若いPOWERを全体で育んでいく風土』を醸成する一助となることを期待しています.自薦・他薦問わず,本コーナーでの執筆希望を是非、編集委員までお寄せください.

細胞治療製品の研究開発における薬物動態研究入門

 細胞治療は,生きた細胞を患者へ投与もしくは移植することで細胞・組織・臓器の機能を改変・修復する革新的な治療です.細胞治療製品の研究開発では,血液中細胞濃度を経時的に評価する細胞動態(cellular kinetics: CK)評価や, 組織への移行を評価する生体内分布(biodistribution: BD)評価が行われます.細胞治療製品は,低分子化合物や抗体医薬,核酸医薬などとは性質が大きく異なるため,薬物動態評価の際には従来の常識に捕らわれずに試験デザインやデータ解釈を行う必要があります.本記事では,細胞治療製品のCKやBD評価のための分析法,CK/BD評価時に実験者が陥りやすい落とし穴,細胞治療製品のCKやBDの基本的特性及びCK/BD解析時のモデリング&シミュレーションの有用性等について,複数回に渡り紹介していきます.