Newsletter Volume 38, Number 1, 2023
はじめに
間もなく春が到来します.ご卒業される方々,おめでとうございます! 新たなステージに向かって,夢と希望を持って前に進んで行きましょう.私は卒業してから随分と長い年月が過ぎました.年のせいでしょうか,最近の薬物動態研究は変化や進化のスピードが速く,かつ多様性が増してきたような気がします.ADC,細胞,LNP,EVs,PROTAC,TikTok,AAVにナノミセル.....あれっ,頭痛くなってきましたが,平成&令和世代の方々に置いて行かれないよう,好奇心を失わずに来年度も新たな挑戦の年にしたいと誓います.
さて,間もなくワールド・ベースボール・クラシックが開幕します.昨年のサッカーW杯では格上のスペインとドイツを破ったこともあり,森保ジャパンはベスト16の成績でも称賛されましたが,野球は優勝を強く期待されています.想像もつかないプレッシャーの中で,チームの勝利のためだけに全身全霊でプレーする侍ジャパンの選手たちを全力応援したいと思います.(M.T.)
特集記事のご紹介
トピックス
新規発見や手法の開発など学問の発展に伴い,医薬品等の研究開発から市販後の評価項目やその手法は絶えず進化しています.それに呼応して,日米欧の規制当局およびICH等からの規制情報も随時更新されています.ここでは,医薬品開発に用いる最新の技術・知見,医薬品審査の規制情報及びそれらに関連する情報のトピックスを紹介していきます.本記事を通じて,会員各位の業務に有効にお役立ていただければ幸いです.
細胞治療製品の研究開発における薬物動態研究入門
細胞治療は,生きた細胞を患者へ投与もしくは移植することで細胞・組織・臓器の機能を改変・修復する革新的な治療です.細胞治療製品の研究開発では,血液中細胞濃度を経時的に評価する細胞動態(cellular kinetics: CK)評価や, 組織への移行を評価する生体内分布(biodistribution: BD)評価が行われます.細胞治療製品は,低分子化合物や抗体医薬,核酸医薬などとは性質が大きく異なるため,薬物動態評価の際には従来の常識に捕らわれずに試験デザインやデータ解釈を行う必要があります.本記事では,細胞治療製品のCKやBD評価のための分析法,CK/BD評価時に実験者が陥りやすい落とし穴,細胞治療製品のCKやBDの基本的特性及びCK/BD解析時のモデリング&シミュレーションの有用性等について,複数回に渡り紹介していきます.