このたび、本学会の会長に山添 康が就任することになりました。皆様よろしくお願い申し上げます。
日本薬物動態学会は、発足から20余年を経て、2,000人を越える会員を擁する学術団体として活発に活動しています。我々の活動は、先人の努力により学術領域の中で既に認知されていますが、一般社会および国際社会のなかでの認知にもつながる活動を進めることによって、さらに展開してゆく必要があります。これらの実現には、学会活動を通じて、医薬品開発への寄与、医療最適化への寄与を目に見える形にすることが肝要と考えています。
現在の我々を取り巻く環境をみると、本学会にとって必ずしもよい状況とは言えません。たとえば、この数年に起きた製薬企業の合併は、研究者総数の減少を招いています。今後ともこの傾向が続けば、若い学生の意欲をそぐことになりかねません。これまで薬物動態学会は、企業、行政関係者の積極的な学会運営への寄与によって支えられてきました。今後も、企業の第一線で活躍する研究者の寄与が薬物動態学分野の発展に欠かせないと考えています。
薬物動態学の成果は、過去10年間に初期創薬における基盤技術として認知されました。しかしヒトにおける薬効と安全性評価への寄与は、未完成のままです。とくに国際的に見ても日本でこの傾向が大きいと感じています。したがってこの領域の充実によって薬物動態関連研究者数の増大を計る必要があります。さらに一般の人たちにも、化学物質の安全への関心が高まっており、その関心はくすりだけでなく、サプリメントや一般食品に広がっています。この期をとらえ、製薬企業だけでなく、健康産業、食品企業からも新たな会員を獲得できるように努力することも必要と考えています。
現在、薬学6年制移行に伴い、薬剤師は、病棟勤務、服薬指導などの業務拡大よって医療の担い手として活躍することを期待されています。薬物動態の知識と考え方は、薬剤師が職能を発揮するのに欠かせないものであり、その職能向上には、単に知識情報の伝達ではなく、個々の薬剤師に薬物動態の考え方を浸透させることが必要です。医療に従事する領域の会員を増すには、職能評価に適応した制度作りを検討すること、また魅力ある学会の姿を、若い、薬学6年制の卒業生に示す方策も重要な検討課題と思われます。
このような課題に向けて、本学会の機能のいっそうの活性化を計るため、平成20年度から、評議員の先生方々に、個別委員会への実質的な参加をお願いいたしました。また理事、会長の選出方法の変更、そして日本薬物動態学会フェロー制度を新設することになりました。これら制度を機能的に活用して、本学会をさらに発展させたいと考えております。
本学会の発展のために、日本薬物動態学会の皆様の本学会の活性化への注力を期待しております。
日本薬物動態学会
第10期会長 山添 康