Newsletter Volume 37, Number 6, 2022

学会 道しるべ

顔写真:佐藤拓海

13th International ISSX Meetingに参加して

静岡県立大学薬食生命科学総合学府 衛生分子毒性学分野
佐藤拓海

 この度は,2022年9月11日-14日に米国ワシントン州シアトルのThe Westin Seattleで開催された13th International ISSX/24th MDO Meeting(国際薬物動態学会13回国際会議)に参加するにあたり,2022年度若手研究者海外発表支援事業に採用いただき,誠にありがとうございました.日本薬物動態学会会長の山下富義先生,国際化推進委員会委員長の中島美紀先生ならびに選考委員会の先生方に心から御礼申し上げます.

 今回,私は「Development of a strategy to identify and evaluate ligand and indirect activators of rat CAR(ラットCARのリガンド及びインダイレクト活性化物質の同定・評価手法の開発)」という題目でポスター発表を行いました.核内受容体CARは肝に高発現し,多種多様な生体外異物によって活性化され,シトクロムP450の誘導をはじめとして薬物代謝や排泄において重要な役割を担っています.また,げっ歯動物におけるCARの活性化は肝発がんを誘導することが知られています.したがって,毒性試験に頻繁に用いられるラットにおける化学物質のCAR活性化作用は,その薬物動態や毒性を考える上で非常に重要な情報になります.私は,複数の試験系を組み合わせることで,化学物質によるラットCAR活性化作用の評価システムの構築に成功し,本研究成果を発表しました.発表の場では,様々な質問やコメントだけでなくポスターの構成に関してもアドバイスを受けて,自身の研究を見つめ直すきっかけとなり,大変有意義な時間を過ごすことができました.私の拙い英語でも海外の先生方は熱心に討論をしてくれたため非常に楽しく,今後も国際学会に参加してみたいと感じました.それと同時に英語でのポスター発表の出来は褒められるものではなく,自身の英語力の未熟さと外国語コミュニケーションの難しさを痛感いたしました.また,ISSXでは研究者間のネットワークを深めるイベントが多く,Welcome Reception,New Investigator Networking Event,Networking receptionと4日の間に3回もありました.研究成果を世界に発表し,海外の研究者と意見を交わすために,より高いレベルで英語能力を研鑽する必要があると再認識しました.

 他にも,世界で活躍する企業,アカデミア,公的研究機関の研究者のシンポジウムやポスターを拝見し,世界で用いられている技術,どのような研究が盛んに行われているのか,国内の学会や論文だけではなかなか得られない情報を知ることで,最先端の薬物動態の動向に対する視野が広がりました.特にボストン大学のDavid J. Waxman先生の発表が印象に残っています.NASHや肝繊維化の複数のモデル動物を用いた網羅的解析によって,その発症に重要な機能を有するlncRNAを同定されていました.研究の内容以外にも,プレゼンテーション中の話し方や間の取り方も巧みで分かりやすく,非常に参考になる発表だと感銘を受けました.

 今回は初めての国際学会参加であり,初めての海外だったため得られた経験値はとても高かったと実感しています.語学面での経験以外にも,海外研究者たちの研究への情熱的な姿勢や学会中の日々の生活など,私の価値観に大きく影響を与えるものでした.

 COVID-19の影響で在学中に国際学会の参加は厳しいと思っていましたが,今回は貴学会の支援のおかげで,参加することができて本当に良かったです.学会会員の皆様にもぜひこの素晴らしい制度を利用して海外の学会に参加して,研究をより深めていく機会にしていただければと思っています.本記事が少しでもその一助となれば幸いです.未筆ではございますが,日本薬物動態学会ならびに本事業の益々のご発展をお祈り申し上げます.

学会風景

<学会会場>
<ポスターセッション>
<Networking reception>