日米合同薬物動態学会
Symposium 4: Recent Developments in
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近年,シトクロムP450 (P450, CYP)による代謝を避ける戦略で医薬品開発が行われた結果,第二相酵素が代謝に関わる例が増えてきています.本シンポジウムでは,第二相酵素の研究動向に触れる機会となることを目指して,主要な抱合酵素であるUDP-グルクロン酸転移酵素 (UGT),硫酸転移酵素 (SULT),N-アセチル転移酵素 (NAT),グルタチオン-S-転移酵素 (GST)を取り上げ,最近のトピックスを紹介することにしました.座長は,International Conjugation Workshop 2016のCo-chairをしたAbby Collier教授 (ブリティッシュコロンビア大学)と,九州大学大学院薬学研究院の石井祐次が務めます.
本シンポジウムでは,5人のシンポジストからお話をいただきます.
一人目のJon Mueller博士 (英バーミンガム大学)は,硫酸抱合による代謝活性化について紹介します.彼の研究の独創的な点は,単に薬物や内因性物質の硫酸抱合を触媒するSULT分子種の同定にのみあるのではなく,硫酸抱合体が,活性代謝物として,他の臓器に運ばれ脱抱合により作用を示すことを研究している所にあり興味深いです.二人目のRobyn Meech博士 (豪フリンダース大学)は,UGT2B11およびUGT2B28研究の新展開について紹介します.UGT2B11およびUGT2B28は,典型的なUGTの基質を用いて検討する限り,触媒活性がはっきりせず,機能未解明の分子種でした.今回,UGT2B11とUGT2B28の機能について,抑制的な活性調節における重要性について紹介します.三人目,石井はP450-UGT相互作用について紹介します.従来のトポロジーモデルでは第一相酵素のP450と第二相酵素のUGTは,小胞体膜を介して主な触媒部位が逆位相であるため,別々に働くと考えられて来ましたが,我々は,P450とUGTがタンパク質間相互作用により互いの機能を調節することを示唆しています.今回は,UGTによるCYP3A機能の調節におけるUGTの分子種特異性について紹介します.四人目は,鹿児島大学共同獣医学部の宇野泰広先生です.カニクイザルは薬物代謝試験で用いられる重要な動物種であるものの,薬物代謝酵素についてはまだ分からない部分が多くありました.宇野先生は,NATを調べ,ヒトと同様,カニクイザルにもNAT1とNAT2があり,組織発現や遺伝子・ゲノム構造がヒトとよく似ていること,また,ヒトのNAT基質を代謝するが,基質特性が少しヒトと異なることを明らかにしています.この結果は,カニクイザルの薬物代謝試験の際に有用な知見になるものと期待されます.
最後は,Abby Collier教授です.今回はGSTについての話題を提供してくれます.GSTは,親電子物質の解毒に重要であるものの,これまで市販薬物の抱合への寄与があまり多くなかったため,医薬品開発における基礎研究が必要とされています.Abbyは,薬物代謝の前臨床モデルとしてGSTの性差と系統差がIVIVE (In vitro to in vivo extrapolation)に及ぼす影響と用量予測について紹介します.10月5日(月)の午後に本シンポジウムが企画されました.セッション参加者の皆様との活発な議論を楽しみにしております.第二相酵素に関心のある方もない方も,ご参加をお待ちします.
Symposium 4: Recent Developments in Phase II Enzymes
Co-Chairs: Abby Collier, University of British Columbia, Vancouver, British Columbia, Canada and Yuji Ishii, Kyushu University, Fukuoka, Japan
- Sulfate Activation − A Key Regulatory Step in Xenobiotic Conjugation
Jon Mueller, University of Birmingham, United Kingdom - UGT2B11 and UGT2B28 have Catalytic and Non-catalytic Functions and are Dominant Negative UGT Regulators
Robyn Meech, Flinders University, Australia - Modulation of Cytochrome P450 3A Activity by UDP-glucuronosyltransferases: UGT isoform-dependent Mechanism of Suppression
Yuji Ishii, Kyushu University, Japan - Monkey NATs as a Model for the Human Enzymes
Yasuhiro Uno, Kagoshima University, Japan - Glutathione-S-transferases in Pre-clinical Models of Drug Metabolism: Sex and Strain affect IVIVE and Dose Prediction
Abby Collier, University of British Columbia, Canada