Newsletter Volume 33, Number 5, 2018

DMPK 33(5)に掲載された各論文の「著者から読者へのメッセージ」

[Regular Article]

In vitroおよびin vivoにおける免疫抑制剤ミゾリビンのリンパ球内取り込みとリンパ球中活性代謝物の測定

Oda K., et al.

 ミゾリビン(MZR)は腎移植患者の拒絶反応抑制に適応のある免疫抑制剤である.MZRはリンパ球内においてアデノシンキナーゼによりミゾリビン一リン酸(MZRP)へと代謝活性化されると考えられているが,MZRのリンパ球内への移行過程やMZRPの蓄積についての詳細な情報はない.本研究により,equilibrative nucleoside transporter(ENT)がミゾリビンの取り込みに寄与しているものと考えられ,リンパ球内でMZRPへと代謝されることが確認された.また,腎移植患者の血漿中MZR濃度とリンパ球中MZRP濃度には相関関係が観察され,全ての患者においてリンパ球内のMZRP濃度はMZRPの標的であるイノシン一リン酸デヒドロゲナーゼのKi値を大きく上回っていた.従って,患者の血漿中MZR濃度を測定することにより,免疫抑制効果を推察することができると考えられた.今後はMZRPのリンパ球内からの消失経路や,MZRのリンパ球内への移行または代謝活性化における相互作用の可能性について明らかにしたい.

[Short Communication]

モノカルボン酸トランスポーター(SLC16A1, SLC16A3, SLC16A11)の日本人における遺伝子多型頻度

Kimura, Y., et al.

 モノカルボン酸トランスポーター(MCT)は,SLC16ファミリーに属する輸送担体であり,14種類のアイソフォームが知られている.中でもMCT1(SLC16A1),MCT4(SLC16A3),MCT11(SLC16A11)はエネルギー代謝や癌・糖尿病といった疾患に関与することが示唆されており,近年注目されている.これらMCTsは遺伝子変異により機能や発現量が変動することが示されているが,日本人における遺伝子多型頻度の報告はない.そこで本研究では日本人におけるMCT遺伝子多型頻度を明らかとすべく,ダイレクトシーケンス法により日本人健常者92名における3種類のMCT遺伝子多型頻度について検討した.その結果,SLC16A1で1つ,SLC16A3で1つ,SLC16A11で5つの一塩基多型(SNP)が認められた.本研究の結果は今後,他人種や患者のMCT遺伝子多型を調べる際に比較データとして活用可能と考える.